通話

 学校が終わり夜8時。


「ご馳走様」

「お粗末さまでした」


 僕は今夕食も取り終わりゆっくりしています。今日は母と一緒に夜ご飯を取っていました


「食器は僕が洗うよ」

「あら、ありがとう」


 いやー、今日のご飯も美味しかった。

 軽快な足取りで食器を運んで洗っていく。夜が楽しみだ。


「颯、今日は機嫌良さそうだけど何かあった?」

「ん?別に~」


 もちろん嘘である。今の僕は他の人が見てもわかるほど機嫌がよい。

 それは何故か

 それは数時間前に戻る


 ─────────────────────

「ねぇ坂本くん」

「どうしたの?」


 早瀬さんとLANEを交換した後の事である。

 あの後僕達は図書室の規定の時間まで、のんびりと過ごした。

 そして図書室の利用客誰もいなくなりそろそろ帰ろうかという時に早瀬さんから提案が合った。


「折角連絡先を交換したんだ。今日の夜通話でもしないかい?」

「通話」


 確認するように言う。

 高校1年生、今まで女の子と電話をしたことなんてなかったのである。


「そう通話。君としたいなって」

「う、うん。僕もしたいな」


 もちろんしたい。家に帰っても早瀬さんと話せるなんて思ってもいなかった。ただ初めて女の子と通話するのである。しかも相手は早瀬さん。緊張も人一倍である。


「ただ·····」

「ただ?」

「初めて女子と通話するから緊張するなって」

「っ··········」


 顔が熱い。自分でも確実にわかるほど顔が赤いと思う。


「そっか、でも安心して。私も男子と個別で通話するなんて滅多にないから」

「え!?そうなの?男子からそういうお誘いされてそうなのに」

「んー、されることはあるけど断ってるよ。基本的にお近付きになりたいからとか邪な理由だし。逆も然り、私から誘うこともないかな」


 ほへー。やっぱり早瀬さんって人気なんだなぁ。

 ばれない程度に早瀬さんの体を見る。出るとこは出て引き締まるところはしっかり引き締まっている、まさに理想の体型。ダメだ、変態みたいだ。


「……。まあいいや、それじゃあ約束ね。忘れたら私、泣いちゃうよ?」

「忘れないよ、絶対に」


 僕は忘れない。忘れたくもない


「ありがと、それじゃあ楽しみにしてるね」

「うん。僕も楽しみにしてる。」


 ─────────────────────


 つまりどういうことか。この後僕は早瀬さんと通話をするのである。


「そう、まぁいいわ。それじゃあお母さん仕事の整理をするから何かあったらまた言ってちょうだい」

「はーい」


 時計をチラチラ。いつぐらいからかかってくるんだろう。それとも僕からした方がいいのかな?なんにせよ早く終わらせよう。

 そして10分後、無事食器を洗い終えた僕は頑張って仕事の整理をしている母親を横目にいそいそと逃げ込むように自分の部屋に戻って行った。


 ワクワク。ドキドキ。

 流石に緊張するなぁ。なんだか喉も乾いてきた。持ってきたお茶を飲む、あぁ美味しい。

 すると


「〜🎶」


 かかってきた。画面を見ると【早瀬夕】の文字。

 おそるおそる通話のマークを押す


『ぁ、やっほー。聞こえるかい?坂本くん』


 おぉ、耳元から早瀬さんの声。なんだかドキドキしてきた。


『あ、あー·····。聞こえるよ』

『んっ·····。そっかそれなら良かった』

『···············』

『···············』


 やばい、何か話さなきゃ。折角彼女と電話をしてるんだ。なにか話さないと勿体ない。


『·····やっぱり緊張するね』

『え?あぁうん。早瀬さんも緊張とかするんだ』

『もちろん。私だって人間だよ?緊張もするよ』

『それもそっか』


 段々と会話が弾む。


『それで、その後の主人公がさ─』


 時には僕のことを


『それで優香がね?』


 時には彼女のことを


『うん·····ぅん』

『坂本くん眠い?そろそろ終わろうか?』

『いや··········。まだ··········』

『かわいい·····。じゃ、なくて!明日も学校だし、今日は終わろう』

『う··········ん···············』


 思考が纏まらない、ほぼ無意識の状況


『それじゃあ、おやすみ』

『···············』


 その言葉を皮切りにそして完全に意識が無くなる。誰の言葉も入らない。












『大好きだよ。坂本くん』


 もちろん彼女の言葉も

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