デート…?


皆はデートと言うものをしたことがあるだろうか?

 もちろん、僕は今までしたことが無かった。そもそも、女の子とこうやって外で買い物をするというシチュエーションが無い。


「坂本くんはどんな服装が欲しいとかあるかい?」

「え?うーん、それじゃあ出来るだけ無難な物が欲しいかな」

「ふむ、なるほど」


 だが今はどうだろうか?こうやって女の子と2人で服を見て回っている。いや、見て回っているというより僕が着せ替え人形のようになっているのだが


(ま、周りの目が····)


 やはり注目を浴びてしまう

 時折感じる様々な人の視線、生暖かく見守ってくる従業員さん達、嫉妬の視線を向けてくる男子高生達など、色々な感情を乗せた視線を僕に向けられている


(やっぱり綺麗だよなぁ)


 横目で早瀬さんを見る

 あまり意識をしないように努力してきたがここまで周りから露骨な視線を向けられると、今自分と一緒にいる彼女がどれほど綺麗で周りからの注目を集めるかわかってしまう。


「うん?どうしたんだい?」

「い、いや。何も無いよ」

「·····?そっか。それじゃあ、はい。これを着てみてよ」

「これ?それじゃあ着てみるよ」


 早瀬さんの選んでくれた物を着るため早速試着室の中に入っていく

 どうやら僕の要望に答えてくれたらしく、白色の服に紺色のズボンといったThe、無難な物をチョイスしてくれたようだ


(なんかホントにデートみたい)


 冒頭に言った通り、デートなんてしたことがないため詳しくは分からないが多分今の状況を世間一般ではショッピングデートというんだろう


(僕と早瀬さんがデート·····)


 ·····これ以上考えるのは辞めておこう。とても恥ずかしい気持ちになってしまう。

 手早く早瀬さんが選んでくれた服を着、鏡で自分の姿を見てみる。


(おぉ·····)


 適当に自分で選んだ服とは違い、どこか自分に合っているような気がする。やはりオシャレに疎い人間より実際にオシャレな人に見繕ってもらう方がいいのかもしれない


(早瀬さんはなんて言ってくれるんだろう)


 今の自分を見て早瀬さんはなんと言ってくれるのだろうか。確かに先程までの自分の服装とは天と地ほどの差があるのは明確だがこの服装を他の人が見た時にどう思うだろうか。


(せめて早瀬さんには似合っているって言って欲しいなぁ·····)


 切実にそう思う

 これで


『似合ってないかな·····』


 なんてこと言われちゃったら泣いちゃう気しかしないよ

 そんなことを1人妄想しながら試着室から出てくる


「あ、早瀬さん」

「どうだい坂本く──」


 ·····


「あの、早瀬さん?」

「··········」


 ん?


「もしかして似合ってない·····?」

「!いやそんなことない、ある訳ないじゃ無いか!」

「う、うぉぉ、、、それならよかったです」


 必死に否定する早瀬さんに驚きながらもどうやら似合ってるわけでは無いらしい。


「あぁ、ごめんね?驚かせてしまって。」

「いやいや!別に大丈夫だよ!」

「なら良かった。·····うん、よく似合っている。かっこいい」


 どうやら早瀬さんからしてもこの服装は似合っているらしい。


(よかった)


 ただ単にそう言って貰えるのが嬉しかった。多分、今僕の顔は赤いと思う。大袈裟かもしれないがどうやら僕は彼女に褒めて貰えるのがとても嬉しいらしい

 彼女の方を見ると何故か顔が赤い。このくだりが恥ずかしかったりするのだろうか


 っと、ここで思い出したことがある。




 今、僕たちがいる所は服屋である




 ここには僕達だけでなく店員やお客さんなども沢山いる




 つまりどういうことか




「あの~、お客様、お会計などはされますでしょうか」


「「···············」」



 注目、浴びちゃいますよね~

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