嫉妬
「行ってきまーす」
母は先に仕事に行ったらしい。いつもお疲れ様です。
休日明けの学校
やはり休日明けの学校というのは少しめんどくさいものだ。
いつも通り教室に行き、荷物を置いておく。中には人が既に大半おり、各々談笑をしている。
と、ここで廊下側から賑やかな声。
どうやらいつものグループが来たようだ。
不自然にならない程度に顔を向ける。
まずは誠くん幸樹くんの男子2人、次点で相川さん、早瀬さん、柊さんの三人組。でも何やら様子がおかしい。
男子2人組と相川さんは楽しく談笑している。ここまでは良い。仲が良いのは良い事だ。
問題は後続の2人である。柊さんは何やらやつれているし、早瀬さんは何やら近寄り難い雰囲気を醸し出している。このクラスになってから今まで、こんな様子は見たことがない。
「おい、なんか早瀬さんの雰囲気怖くね?お前何か聞いてこいよ」
「え、やだよ。チビりそうだもん」
クラスの人も同じ違和感を抱いているようだ。
「あの~早瀬さん?なんか機嫌悪い?」
クラスの勇敢な女子が早瀬さんに質問をした。
勇敢な彼女に盛大な拍手を送りたい。
「ん?どうして?特に機嫌は悪くないよ」
絶対嘘だ!引いたさんがなんかピクピクしてるもん!鬼を見るかのような目で見てるもん!
「そ、そう?変な事聞いてごめんね?」
女の子撃沈。貴方はよく頑張ったよ、心の中で盛大な拍手を送ろう。
柊さんがこっちを見た。
「··········」
何かを言ってる。ただ何を言ってるのかは検討もつかない。
「?」
首を少し傾げる反応をすると柊さんは絶望するようにガックシ。
魂が抜けてる、気をしっかり持って。
次に早瀬さんが早瀬さんがこちらをチラリ。
ぼ、僕は何もしてないぞ!
数秒間こちらを見た後
プイ
『私、不機嫌です』と、言わんばかりに分かりやすく顔を逸らした。あなた、そんな動作する人でしたっけ。
えぇ·····
僕何かしたかな?休日前までは普通だった。休日で何かあったかと言われれば特に·····。
··········あ。
柊さんと連絡先交換したわ。えぇ、でもそれくらいだぞ·····。
他は特に何もしてないし·····。
う~ん、わからん!
僕が乙女心に理解があれば良かったが残念ながら疎い方だ。
結局、その時は原因がわからずどうしようもなかった。
─────────────────────
放課後になった。
僕は今、図書室にいる。久しぶりの活動だ。まぁ、人は相変わらず余りいないんだけどね。
そういえば、早瀬さんはお昼頃にはいつも通りになっていた。柊さんも元通りになっていて、穏やかな時間が流れて行った。
でも結局最後まで僕は早瀬さんが不機嫌になった理由はよく分からなかった。
今日は早瀬さんは手伝いに来てくれるんだろうか?
·····来なさそうだな。
ガラッ
ドアの開閉音。誰か来たらしい。
後ろから近づいてくる足音。
「すいませーん」
あれ?この声
まぁ違う人の可能性もあるし·····。とりあえず呼ばれてるんなら返事しないとな。
振り向いて返事をしようと·····
「は~い」
「つーん」
「むぐ!」
頬を人差し指で、つつかれた。
「は、早瀬さん!?」
「しー、図書室では静かに。周りの人に見られちゃうよ?」
いけないいけない。周りを見ても特に人はいないかった。確かに図書室では静かにしないとねっ·····て、そうじゃなくて!
「早瀬さん?なんでここに?」
「と、その前に」
ん?
僕の口に人差し指を当て
それは、余りにも魅力的な顔で
「ちょっとお話をしようよ」
1匹のか弱い動物を狙うかのように
「私ちょっと嫉妬しているんだ」
そんな言葉が紡がれた。
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