保健室って特別感あるよね

「いや、痛いわ」


 どうも、顔面にボールが直撃した坂本です。

 さっきは平然とした態度をとったけど実はめちゃくちゃ痛いです。鼻血を出すなんて何時ぶりだろうか、頬もヒリヒリする。早く保健室に向かおう。鼻血が垂れないように何とか抑えながら保健室を目指す。


「失礼しまーす」


 何とか保健室に着いたので片手で扉を開け、中を確認する。先生はいるかな?


「··········」


 どうやら誰も居ないらしい。基本的に保健室に居そうなものだが別の所にでも行っているのだろうか。


「どうしよ·····」


 先生が居ないんじゃここに来た意味が無い。戸棚を見ると塗り薬などが置いてあるが流石に勝手に取るのは気が引ける。そもそも薬に詳しくない僕ではどれがどれかよくわからない。

 あ、あそこにティッシュが置いてあるや。流石にティッシュぐらいはとってもよいだろう。

 ティッシュを借りて鼻に詰めることには成功した。手に血がついてても嫌なので素早く設置されている水道に両手をつける。程よい冷たさが丁度いい。


「さて、と」


 体育が終わるまであと30分はある。今日はもう体育には参加できそうにないかな。

 設置されている椅子に座る。先生がいつ戻ってくるかも分からないし、大人しく待っていよう。

 ふと窓を見る。どうやら他学年が体育をしているようだ。1年は僕たちがやっているからおそらく2、3年の学年だろう。ぼーっと眺める。見ている限りどうやらサッカーをしているらしい。サッカーか~、サッカーって苦手なんだよね。基本的にコートの隅っこに居るし、ボールが来ても焦って思うような所に蹴れないし。せいぜい僕ができる事と言えば僕が戦犯にならないように祈るぐらいだ。

 ぼーっと眺めていると、保健室の扉側から小走りで廊下を駆ける足音。

 先生帰って来たかな?


 ガラッ


 お、当たりっぽい。


「あ、先生。失礼して、、ま、、、す、、?」


 振り返るとそこには


「ごめんね、坂本くん。先生じゃないや」


 なぜか早瀬さん


「は、早瀬さん?どうしてここに?もしかして早瀬さんも怪我とか·····?」

「いや、私は特に怪我はしてないよ」

「えっと···。それじゃあどうしてここに?」

「いや、ふと隣を見たら坂本くんの顔に凄い勢いのボールがぶつかったのをみちゃってね。流石に心配になってね、迷惑だったかな?」

「い、いや!全然そんなことないよ!」


 ずるい、そんなこと言われたら断れるわけが無い。


「そうか、それならよかった。」


 安堵の表情を浮かべる早瀬さん。そのまま僕に近づいてきて僕の頬に、、、、僕の頬に!?


「あ、あの、、、、早瀬さん!?」

「ごめんね、少し心配だったんだ。でも、うん。少し腫れている感じかな。冷やしておいたら時期に治まると思う」


 大事な物を取り合うかのように慎重に触れるのでとても擽ったい。でも心地よい感じがして不思議な気分。

 でも、こんなことを平然とするって事は誰かにも同じようなことをやっているんだろうか?


「··········。ちなみに、私がこんな事を誰でもするなんて思ってないよね?」

「え、したことないの?」

「当たり前じゃないか。こんなこと君以外にした事ないよ。君以外とする訳···············。ごめん今のナシ。」


 とても形容し難い空気になってしまった。でも僕以外にしたことないんだ·····。それはなんだかとても嬉しい。


「そ、それで。先生は?」

「あ、うん。多分どこかに行ってると思う。僕が来た時にはどこにもいなかったよ」

「んー、そっか。なら私も先生が来るまで待っておこうかな」

「え·····?いやでも早瀬さん体育抜け出してきたんでしょ?先生に何か言われたりしない?」

「普通ならそうだと思うけど、私はこれまで真面目に過ごしてきたからね。これぐらいだったら先生も見逃してくれると思うよ。まぁ、理由を聞かれた上手くはぐらかしておくよ」


「な、なるほど·····」


 確かに早瀬さんは真面目だし先生からの信頼も厚そうだ。

 僕はどうかって?うるさいうるさい。真面目にやってるつもりだけどそこまで信頼されてる感じはしないや。


「うーん、それじゃあお願いしようかな。1人だと暇だったし。よければ話し相手になってくれると嬉しいや」

「うん。沢山お話しようか」


 それから先生が来るまで沢山話をした。

 そうそう、時折早瀬さんの事を褒めたら凄いスピードで後ろを向いていた。チラッと映る耳が赤かったので多分褒められる事に慣れていなかったのかな。とても可愛かったや。

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