帰宅中の出来事
「はい、それじゃあ今日の補習はここまで!雨も降ってるから気をつけて帰れよ~」
午後の授業が一通り終わり、既に帰宅する放課後の時間。
隣のクラスでやっていたであろう補習は終わりを告げ、中に居た人達が続々と教室から出てくる。
そんな人たちを横目に昼から降り注いでいる雨を見ながらどうしようかと考えているところである。
もう教室には人は殆どおらず、殆どの人は帰宅しているか文化部が部活動に励んでいるぐらいだろうか。
「やっぱり走って帰るか⋯」
流石に走って帰るには少々きつい距離だが何時までもここにいる訳には行かない。更には雨が今よりも強くなる可能性もある為早めに帰るのが得策だろう。
「はぁ、帰ろ」
カバンを持ち教室を後にし、下駄箱へと向かう。
「水無瀬先生、わざわざありがとうございます」
(うん?)
道中にある職員室から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「いやいや、可愛い自分の生徒の為だからね!早瀬ちゃん、他に聞きたいことはある?」
「それならここも⋯」
チラッと覗き見るとそこには早瀬さんと担任の先生の姿が。手元にノートがある為、授業のことで質問でもしていたのだろうか?
(あんまり除くのも悪いし早く帰ろっと)
少しの罪悪感から職員室と通り過ぎようと
「あ、坂本くんさようなら~!」
(oh⋯)
なんてタイミングでこちらに気付いてくれたんだろうか。
先生にとっては自分の持っている子に挨拶をするのは当たり前なのだろう。その気持ちはとても嬉しく思うのだがいかんせんタイミングが良くない。
「⋯⋯」
早瀬も驚いた顔をしている。このシチュエーションだと僕が覗きでもしていたと思われているんだろうか。いや、実際チラッと覗き見しましたけども。
「あれ?坂本くん?」
「あ、先生さようなら~⋯」
動揺を押さえ込んでできるだけ普通に応える。
そしてその場から離れるようにそそくさと帰る。
「はいさようなら~!気をつけて帰ってね~。それじゃあ早瀬ちゃん他にどこが聞きたいの?」
「あー⋯いえ、他は特にありません。ありがとうございました」
「そう?それじゃあ早瀬ちゃんも気をつけて帰ってね~」
僕を追うように早瀬さんも質問を切り上げる。
「一緒に帰ろ?坂本くん」
「あー⋯」
そして僕の横に着きこんなことを言ってきた。いつもの僕なら喜んで首を縦に振っていただろう。
しかし今の僕は傘を持ち合わせていないので走って帰るつもりだ。残念だがここは断ろう。
「ごめん早瀬さん。実は傘を持ってくるのを忘れて走って帰るつもりなんだ。だから今日は1人で帰るよ」
心苦しいが仕方ない。本当に惜しいことをしたと思う。
「それなら私の傘に一緒に入ろうよ。流石にこの雨だと風邪をひいてしまうよ」
「えっ」
傘を一緒に⋯⋯。
それってつまり相合傘ですか!?
「でもわざわざ⋯」
「私の傘結構デカいからさ、2人で入っても問題ないと思うんだけど⋯どうかな?」
自分の持っている傘を僕に見せて聞いてくる?確かに2人で入っても雨は防げそうなぐらいの大きさである。
「いやでもその、言いづらいんだけど相合傘ってことになるけど」
「ん?私は別に気にしないよ」
気にしないんだ⋯。
「んー、それならお願いしてもいいかな。途中まででいいから入れて欲しいかも」
「いいよ。それじゃあ靴履き替えるから待ってて」
そう言って早瀬さんは自分の靴を履き替えに行く。
私、
坂本。生まれて初めて相合傘というものを経験します
─────────────────────お久しぶりです。リハビリがてら少しずつ書いていきます
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