隣の席は…?

「おはよ~」

「そっか、昨日席替えしたから近くなったんじゃん!」


「うへぇ、席1番前じゃん·····」

「うわ~、ご愁傷さま」


 朝のホームルーム、みんな心機一転新しい席での授業。先生が来るまでの時間、少し心躍る。

 隣から視線を感じるがひとまず置いておこう。

 僕は1番後ろの席。1番後ろってなんでこんなにいいんだろうね?なんだか開放感があるや。


「ねぇねぇ夕。昨日幸樹がさ~、て聞いてる?」

「おいバカやめろ」


 ··········。後ろに人が居ないってことがやっぱりでかいと思うんだよね。目が悪かったら前になってただろうから視力大事にしててほんとに良かったよ。


「いいですか誠?授業中の居眠りはほんとにダメですよ?」

「わかってるって。それにもし寝てても起こしてくれるだろ?」

「はぁ、ホントにわかってるんでしょうか·····」


 ··········。いやぁ、ホントに。


 なんでこんな席になってるんでしょうかねぇ!?

 なんで僕の前にこんなにキラキラグループが集まるんでしょうかねぇ!?

 どんな偶然!?どんな奇跡!?

 ·····は!周りの嫉妬の視線が!憎しみと憎悪と興味で渦巻いている視線が!


 ピコン!


 LANEの音だ。こんな時間にいったい誰·····。


 早瀬

 ねぇ


 早瀬さん·····?

 チラッと横を見る。なぜ故LANE?


「·····むぅ」


 私、今不機嫌です。と言わんばかりの表情をしている。


 坂本

 どうしたの?


 早瀬

 見てるの気づいてたよね?


 はいすいません。めちゃくちゃ気づいていました。でも気のせいだったら恥ずかしいので触れませんでした。僕は悪くないぞ!


 坂本

 はい。ごめんなさい


 こういうのは素直に謝っておくのに限る。


 ガラッ


「おーい、静かにしろー。そろそろ英語始めるぞー」


 先生が入ってきた。もうそんな時間だったのか。


「お、席替えでもしたのか。·····それじゃあ初めはペアになって教科書の英文でも読み合うか」


 ひぃ·····!出た、ペア学習。いつもペアでなにかするのって苦手なんだよなぁ·····。


「せっかくだから今日は横の人と読み合うようになー」


 横の人!と、言うことは·····


「うん。それじゃあ坂本くんよろしくね?」

「あ、よろしくお願いします·····」


 早瀬さんとだ。早瀬さんとなら全然嬉しい。

 相変わらず周りの特に男子の視線が痛いけど気にしない気にしない。

 互いに教科書を取り向うところで


「··········。ねぇ坂本くん。申し訳無いけど教科書を忘れてしまっから良ければ一緒に見せてくれないかな?」

「別にいいけど」


 早瀬さんが忘れ物だなんて意外。でも忘れ物なんて誰でもあるか。自分の教科書を早瀬さんの机に置き、僕が遠くから覗き込むように教科書を見る。なんだか変質者みたいだけど許して欲しい。


「坂本くん。その体勢辛くないかい?」

「いや?別にそんなこと───」

「その体勢辛くない?」

「いやだからそんなこと───」

「辛くない?」

「ツライデス!」


 いやこえぇぇぇ!!

 有無を言わさない質問。僕じゃなくても頷くしかないよ。


「それなら机をくっつけた方がいいね」

「え、いやそこまでは·····」

「いいからいいから」


 そう言いながら自分の机を近づけてくる早瀬さん。僕も少し近づけ──────いや近い近い!!


「あの?早瀬さん?」

「ん?これぐらい近づけないと坂本くんも辛いでしょ?」

「あー、まぁそうですね」


 そして完全に机をくっつけ僕の教科書を2人で見るように。

 うぅ·····。早瀬さんのいい匂いと時々触れ合う肩でドキドキが。前もあったけどやっぱり慣れない。


 早瀬さんはとても笑顔でボソボソ


「いい、すごくいい·····」

「あの?早瀬さん?」

「·····!あぁすまない。それじゃあやろうか」


 そこから一緒にペア学習一通りをしたが問題なく終了した。クラスの人達には僕達の関係は知られていないため互いによそよそしくしていたが隙を見て笑いあったりしたのでとても楽しかった。




 そんな僕たちをこっそり覗き見するかのように見る4人たちがコソコソ·····


「今の顔見た!?夕の乙女の顔!」

「あれでホントに隠してるつもりなのか·····?」

「全くです。完全に恋する乙女の顔なのですが·····」

「これが青春か!」

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