第一章:腐れ子息
第22話:謎のメイドさん、再び
オレは社畜リーマン、〇〇 〇〇。(本名は思い出せないから好きな日本人名を入れてね)
幼馴染で同級生の女子なんているわけないので一人で会社からの帰り道を歩いていて、コンビニで新発売のビールを目撃した。
購入したビールとおつまみでの晩酌の想像に夢中になっていたオレは、背後から近付く謎の人物に気付かなかった……
オレはその人物に刺殺され、目が覚めたら――
身体が
『ルインズ・メモリー』というゲームの世界に転生したオレの正体が社畜リーマンだとバレたら大変なことになる(かもしれない)。
陰キャコミュ障引きこもりみたいな女神様の助言を受けたオレは、ゲームの悪役“腐れ子息”ネロ・D・アークとして生きることを決意したのだった。
ゲーム知識が役に立たずとも頭脳は大人。
逃げ道なしの悪役転生。
生き残る道は、一つでもあるのか!
◇ ◇ ◇
はい。あらすじ終わり。
あーあ、前世の漫画が懐かしいなぁ。あの作品の最終回をもう見られないと思うと悲しくなってくる。
オレは現在、自室で本を読んで過ごしていた。
女神様A(暫定的に陰キャっぽいほうをA、エウロペと呼ばれるほうをBとする)と魂の世界で会ったのはもう三日も前のこと。
その間、特に事件もなく、オレは毎日ほとんど誰とも会わずに読書で時間を潰している。
というか、できるだけ他人と関わらないようにしているんだよな。
だって正体がバレたらマジで大変なことになるかもしれないし。
王国一の権力を持つといっても過言ではないアーク公爵家の跡取り息子が、謎のおっさんに魂を乗っ取られたと判明したら、果たしてどうなるか分からない。
ネロは嫌われ者として有名だが、だからといって流石に「そっか。じゃあこれからよろしくね正体不明のおじさん。その身体は好きに使ってくれていいよ~」とはならないだろう。黒魔術的なアレコレで身体と魂を無理やり引き離されちゃうかもしれない。
これは決して被害妄想などではなく、『ルインズ・メモリー』の世界には実際にそういう魔法があることをオレは知っている。
そんなわけで、しばらくの間は波風を立てずに生活することに決めたというわけ。
このまま平穏に五年が過ぎてゲームのシナリオに合流しないかなぁ、なんて考えていたとき……
コンコンコン。
部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「坊ちゃま、いらっしゃいますか」
続いて、なんとなく聞き覚えのある女性の声。
はて、誰だろう? 普段の食事を部屋まで運んでくるのは執事のセブルスさんなので、ここに女の人が来るのは珍しい。
てかネロはメイドさん達からの評判が最悪だからな。ネロが自分で呼びつけるか、よほどの非常事態が起きるかしないとまずここには訪れない。
「どうぞ」
とりあえず入室を許可すると、「失礼します」と言ってそのメイドさんが入ってくる。
「あ」
オレは彼女の姿を見て思わず声を上げた。
入ってきたのは、オレがネロの自我に呑み込まれかけたときに図らずとも助けてくれた謎の青髪眼帯メイドさんだったのだ。
「え、えっと……どうしたの?」
ネロの口調ってこれで合ってるっけ、と思いながらとりあえず用件を尋ねる。
青髪メイドさんはその問いには何も答えず、押し黙ってオレの顔をじっと見つめていた。
「……? あのう」
「今日は、お一人なのですね」
メイドさんが無機質な声で言った。
「え? 一人って、ボクは毎日部屋には一人で――」
「失礼、言葉が足りていませんでした」
そして、メイドさんはとんでもないことを言いだす。
「今日は一人分の魂しか見えませんね。ネロ坊ちゃまの魂ははどこですか、見知らぬお方」
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