第4話:"女神様”

振り返るといつの間にか立っていた謎の美女。

「ああ、申し遅れました。私、女神です」

そんな自己紹介をしてきやがった。


女神。女神ね。

はいはい、そういう存在がいるとは思ってたよ。

オレが一番好きなゲームの世界に転生したんだ。偶然、たまたま、奇跡が起こって、なんて考えるのは愚かしいことこの上ない。

だから、意図的にオレの魂(この表現で合ってるのか?)をこの“腐れ子息ネロ”に移し替えた奴がいるんだろうな、とは直感的になんとなく分かっていた。

だからオレはゴホン、と咳払いして――


「あの……ここはどこですか?」


そんな質問しかできなかった。


いやいや! だっていきなりすぎるもん。なんの心の準備ができてないのに、いきなりクリティカルな質問をするなんて無理よ無理。

平々凡々、下手したらそれ以下の俺的人間強度じゃこういう当たり障りのない世間話みたいな質問しかできないわけ。アンダスタン?


女神と名乗った美女――金髪で青目の、法衣みたいな白いドレスを着こなしたすげぇナイスバディなお姉さん――はじっとこちらを見つめ、こう言った。


「……ふう、どうやら余計な記憶まで思い出す前に食い止められたようですね」

「余計な記憶……?」

この人は何を言っているんだ? それに、「食い止められた」という表現も気になる。

それってどういう、とオレが尋ねようとしたのが分かったのか、女神様はストップというように静かに手を前へ突き出した。

「ええ、記憶です。この世界で生きるためには余分な記憶。たとえばあなたの地球での本名や、人間関係に関する記憶……あとは、前世に未練を残すような思い出なんかも全部私が封じておきました」

えぇ……とんでもないこと言ってないか、このお姉さん。

でも確かに、こうしてオレが日本人だったということを思い出しても、じゃあ地球に帰りたいなぁとは微塵も思わない。なんならこの世界でセカンドライフを思う存分楽しんでやろう、とまで考えている。この前向きな気持ちは女神様の図らいによって生まれたということか。


「あとは、あなたが殺された記憶とかですね」

とんでもないことをサラッと言ったね!?

やっぱりオレ、日本で殺されてるんじゃん!

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