第21話:悪役人生スタート

「分かりました。じゃあオレはこれからどうすればいいんですか?」

「わ、わたしがこの子を教育する間、なんとかこの子として生きていてほしい」

「生きていてほしいって……」

つまり、普通に過ごせばいいってことか?

それにしては不穏な言い方だが……

女神様(?)の言い方だと、みたいじゃないか。

「そ、そう。下手をするとしぬ……」

「死ぬの!?」

ナチュラルに心読むね、この人。

「しにそうなほどつらい運命が待ってる……いっぱい」

「えぇ……」

いっぱいかよ。聞きたくなかったなそんなの……いや、ここはポジティブに前もって危険が分かったことを喜ぶべきか。


「でも」

女神様(?)がそう言った。

「対策は、しておいた」

「対策?」

「そう。

裏技だって?

「エウロペは、、から」

女神様(?)の口調は、今までよりも少し力が込められている気がした。


「それって、どういう……」

さらに説明を求めようと口を開いたとき、オレの身体がいきなり光りだす。


「うわ! な、なんですかこれ!?」

「あぅぅ……時間切れ」

「時間切れ!?」

「ぶ、分離した魂が、肉体に戻ろうとしてる……」

あ、そういうこと……

「いまはもう、説明する時間がない。と、とにかく。わたしがこの子を教育しておく、から」

「教育?」

さっきも言ってたな、それ。

「そう。たっぷり、二人っきりで、……ふひっ」

な、なんか女神様(?)がいきなり嗜虐的しぎゃくてきな笑みを浮かべたのが気になりすぎるんですけど。


その間にもオレの身体はどんどん光を増していく。

「そ、それじゃ。ばいばい」

「え、ちょっと待ってください! まだ聞きたいことが!」

オレは慌ててそう言った。今や光はほとんど全体を覆い、もう女神様(?)の顔もろくに見えない。


頭の中に様々な疑問が駆け巡る。

戻ったらオレは一体どうすればいいのか?

また女神様(?)と会えるのか?

会えるとしたらそれはいつになるのか?

対策とは、裏技とは一体何なのか?

そして、残されたわずかな時間でオレが質問したのは――


「――って一体ナニをするんですか!?」


女神様(?)は一瞬の沈黙のあと……

「………………ふひひ」

という、意味深な笑い声を上げた。


そしてオレの身体が完全に光に包まれ、意識が遠のいていく――


「――あ。最後にいっこだけ、記憶を戻すね」

どこか遠くで、女神様(?)の声が聞こえたきがした。


◇ ◇ ◇


「くっそおおおおおおおおおお!! 質問一個無駄にしたああああああああああ!!」

意識が戻ったオレは掛け布団を蹴り上げてベッドから飛び出し、開口一番そう叫んだ。

ちくしょう。どうしても気になりすぎて一番意味のないことを聞いてしまった……オレの馬鹿野郎。やらしい雰囲気に抗えなかったぁ……


くそっ。過ぎたことは仕方がない。これから気持ちを切り替えないと。

女神様(?)が言うには、今後のオレは死にそうな目に遭いまくるらしい。

どうせネロは最終的に処刑ルートに突き進むというのにな。

しかも、今から五年間はゲームの知識が役に立たないと来たオレの第二の人生、ハードモードすぎないか?


「……チートも知識もなくたって、どうにかして生き残るしかないか」

最後に女神様(?)が戻してくれた記憶がその思いを強くしてくれた。

そう。

オレは絶対に死にたくない。死んではならない。

五年の月日を生き延びて、その後の処刑ルートも回避して、絶対に生きなければならない。

を見せられちゃな……


何にもない腐れ子息に転生したけど、何がなんでも生き延びてやる!!



〈『第一章:腐れ子息』に続く〉

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