第20話:エウロペの目的

「……なんかネロが暴れてるんですけど、せめてガムテープは剥がしてやっていいんじゃないですか?」

「……んー」

女神様(?)はオレの言葉に少し悩むようにしたあと、ネロに近付いた。

そしてテープの端に手をかけ……

「えいっ」

「ビャギャァ!?」

ビリビリッ!! と一気に剥がした。

口が自由になったネロはしばらくもだえていたが、痛みが治まったのか一気にまくし立て始める。


「お、お前ら!! ボクにこんなことをしてタダで済むと思うなよ!! ち、父上に言いつけたらお前らみたいな下等な人間なんかいつでも捕まえられるんだからな!! そしたらボクがじきじきにお前らをごうもムググググググ!!」

あ、女神様がガムテープを貼り直した。


「ね? 暴れる……」

「うーん……」

確かにテープは貼ったままでもいいかもな。口を自由にしていたらこっちの耳が痛くなりそうだ。

「と、とにかく。この子はわたしに任せて……」

「え? それってどういう……」

「応急、処置だけど。一時的にあなたと、この子の魂を切り離す」

「切り離す?」

なんかすごいことを言っている気がする。

「そう。すごく危ないこと、だけど。で、でも、このまま放っておいたら……あなたがこの子の自我に呑み込まれちゃう、から……あぅ」

「ちょ、ちょっと待ってください。そもそもなんですけど」

オレは緊張しながら核心に触れた。

「……どうして、オレは転生したんですか?」


「……あぅ」

女神様(?)が口ごもった。

だんまりか……? と思ったが、彼女は言葉を選ぶように話し始めた。

「そ、それも、エウロペの仕業……」

「……オレの転生を仕組んだのはエウロペさん。そしてオレとネロの魂の融合がうまくいってないのも、エウロペさんのせいだと?」

「そ、そう」

……んん?

「……じゃあなんでエウロペさんはそんなことをしたんですか?」

……あぅ」

「そうっすか……」

分からない、ではなく教えられない、と来たか。

「い、いまのわたしは……色々あって、権能のほとんどが失われてる、状態。だから、全部は話せない……」

オレの不信感が伝わったのか、女神様(?)は慌てて説明を付け加えた。

うーむ、何やら彼女なりの事情があるようだ。

質問に答えてくれたのに、また謎が増えるなんてな……


だけど、収穫はあった。

エウロペの目的は一体何なのか。

これを突き止めれば、オレを取り巻く一連の状況に説明がつく気がする。

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