第19話:二つの魂

「ムー! ムー!!」

ガムテープを貼られ、くぐもった声しか出せないネロ(グルグル巻き)。

オレは訳が分からず、女神様(?)のほうを振り返った。


「あのー、これは一体どういうことですか?」

「……あ」

「あ?」

「暴れる、から……巻いといた」

「巻いといたって……」

この姿は女神様(?)の仕業らしい。

いや、それはどうでもよくて。

「オレはネロに転生したんですよ。それなのに、どうしてコイツがここにいるんですか?」

「あぅ。魂を、分けたから」

「魂を……分ける?」

オレが眉をひそめて繰り返すと、女神様(?)はポツポツと喋り始めた。


いわく、ここは魂が肉体から分離して存在する精神世界みたいな場所であるらしい。そのため、オレはネロの身体から分離して一つの魂として独立し、元々ネロの中にあったネロ自身の魂もこうして存在しているのだという。


「あなたたち、ふ、二人は……わたしが、呼び寄せた。ここは、わたしが生み出した世界」

「なるほどね……」

とにかく、この和室みたいな空間は女神様(?)の創り出した場所で、オレとネロが独立してこの場所にいるのは魂が二つに分かれているから、ということか。

女神様は続けて話す。

「あ、あなたたちは、その。魂の融合がうまく、いってなかった……エウロペの、仕業」

エウロペ……最初に会った女神様のことね。

「そ、そのことは……あなたも、感じたはず」

「感じた……あ!」

もしかして、あれのことか?

オレがアーク公爵に会いに行ったとき、突然ネロとしての意識が芽生えてオレ自身の意識がなくなりかけたことがあった。

あのときは結局メイドさんに声を掛けられて我を取り戻したが……あれは魂の融合とやらがうまくいっていなかったからなのか。

「そう」

オレの心を読んだらしく、女神様(?)が頷いた。そしてたどたどしく言葉を続ける。

「き、きんきゅうじたい、だった。放っておくと、あなたの自我が消滅するところだったから、強引に、こっちに来てもらった。あぅ、怒らないで?」

「いや、怒るも何も……ようするに、オレを助けてくれようとしてるんですよね? だったらむしろお礼を言いたいくらいですよ」

「う、あぅ……」

赤面する女神様(?)。なんか小動物みたいで可愛いなぁ。


ともあれ、これで謎が一つ解決したが……まだ分からないことはたくさんある。

次は何を聞こうか……


「ムー! ムーッ!!」

……それにしてもネロの奴、ずっと暴れてるな。


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