第17話:女神様

「……えーっと、どちら様?」

「あぅ。え、えっと。その……あぅ」

いや、あぅじゃなくて。

なんだこの女の人。

黒髪ストレートの長髪。前髪も長くて顔が隠れているから分かりにくいが、多分相当な美人さんだ。百五十センチそこそこの小柄な体格で猫背気味。顔をうつむき気味にして、手をそわそわと胸の前で組んだり離したりしている。着ているのは白一色のロングワンピース……いや、これ寝巻きじゃないか?

うーん、言っちゃ悪いがコミュ障の引きこもりっぽい見た目だ。

ここってオレの夢の中だよな? 夢の登場人物にしてはちょっとキャラが濃いな。

「あ、あの……の中じゃない……っていうか……」

「え、なんですって?」

「だ、だからそ……ここは……しのせ……」

やばい、声が小さすぎてほぼ聞こえない。

「あぅぅ……人と話すの……にがて……」

ワ、泣いちゃった。

どうすんだこれ。この調子じゃ会話にならないぞ。

オレは途方に暮れて目の前の女性を見下ろし――


……ん? 


オレは慌てて自分の手を見る。

うお、ゴツっとした大人の男の手だ。

今の今まで気付かなかったが、オレは何故か成人男性の身体になっていた。

どういうことだ? オレはさっきまでネロ・D・アークだったはずだが……

もしかしてまた転生したのか?

「ち、ちがう。姿……」

「えっ? 元の姿?」

「に、日本人としてのあなたの姿……」

「……!」

「て、転生した姿は、、から……」

なんと。

この人、とんでもないことを言ったな。

「つまり、あなたはオレが置かれている状況を認識しているんですね?」

こくん、と頷く謎の女性。

「……あなたは何者ですか?」

「その……め」

「め?」


「め、女神です……自分で言うの、恥ずかしい。あぅ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る