第2話:取り戻した記憶
とてつもない頭の痛みで目が覚める。
ここは一体……?
オレはどうしてこんなところで寝てたんだ?
身を起こそうとながら、どうしてこんな状況になったかを思い出してみる。
えーっと、まずオレの名前は……
……あれ、おかしいな。うまく思い出せない。残っているのは、オレがごく普通の社畜リーマンとしてブラック企業で毎日ひいこら働いていた記憶だけだ。
――ああ、そうだ!
第一志望の大学受験は見事に失敗。滑り止めの滑り止めという入りたくもない大学にだけは合格して入り、サークルもいバイトもロクにせず、ひたすら家でゲームとネットをするだけのしょうもない日々。
勉強なんか全然せず、資格は運転免許だけだったから就活も失敗し続け、やっと内定を取れたと思ったら不正、改ざんは当たり前のゴミみたいな会社だったんだよな。
上司からのパワハラなんて日常茶飯事で、営業ノルマを達成できなかったら殴られることもあったっけ……やべ、余計に頭が痛くなってきた。吐き気もしてくるよ。
上半身だけ起き上がり、特に痛みがある頭頂部に手をやる。
うわ、でっかいタンコブ。何か大きな物に頭をぶつけて、それで気を失ったってわけか?
そしてこんなタンコブを作ることになった元凶は……目の前にある、この趣味の悪いバカでかい壺かな。
アンティークってやつか? 営業先の家にこんな家具があったら絶対笑っちゃうね、オレ。なぁに、このけばけばしい柄? しかもハゲワシが描かれてるんだけど。
フフッと笑い声を漏らしたら、また頭が痛んだ。ちょっと体を揺らしただけでも痛ってーな。
できるだけ身体を揺らさないように、でも目の前の悪趣味な壺をもっと見ようと少し顔を近づけて……気付いた。
「……?」
誰だこいつ。
本当にアンティークかってくらいピッカピカの壺を覗き込んでいるのはオレ……ではなく、いかにも成金のボンボン息子って感じのでっぷりとした外国人の子供だった。子供らしい……というべきか、年相応のあどけない目は訝しげに細められている。
後ろを振り返る。が、誰もいない。
怪訝に思って壺を見返すと、子供も同時にこちらへ振り向くところだった。
……? なんかおかしいぞ?
右手で頬を触ってみる。すると、柔らかい贅肉の感触。こんなにオレ肉付いてたっけ?
そして目の前の子供も、オレとまったく同じタイミングで頬を触っていた。
……………………………………………………
頭が痛くなってきた。だが、これはタンコブのせいではない。
壺から目を離し、自分の身体を見る。
見慣れた自分のアラフォーボディではなく、壺に映っていた外国人の子供とまったく同じ服装の身体だった。
…………ふーん。なるほどね。
「オレ、異世界転生しちゃいました?」
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