第11話:▶さいしょからはじめる

セッタ。セッタ?

こいつ、セッタって言ったか? 今?

考えもつかなかった返答に、オレは一瞬絶句してしまう。

だってアレだろ? セッタって日本のタバコの愛称で――


「お、おい……セッタって、もしかしてセブン――」

「“……う、うぅ。ここは? それに、あなた達は一体……”」

「!!」

こいつ、レイフォンの最初のセリフを喋ったぞ!

オレは慌ててレイフォンの肩を揺さぶる。

「待て待て、質問に答えろ! セッタを知ってるってことは、お前もなんだろ!? オレと同じ……」

だがレイフォンは何も言わない。先ほどの目の活力は再び失われ、ロボットのような無感情な目をしていた。

「この野郎――」

「やめないか、ネロ!」

「っ!」

平手打ちでもう一回目を覚まさせてやろうと振り上げた腕を、アーク公爵に掴まれた。

「見た目は同い年くらいの少年とはいえ、どんな正体を隠しているか分からん。下がっていろ」

そう言ってオレはグイッとアーク公爵の背後にグイッと追いやられてしまった。

くそっ、邪魔されてしまった。

まあいいか、とりあえずセッタのことはあとでレイフォンに問いただすとして……


「“……う、うぅ。ここは? それに、あなた達は一体……”」

もう一度同じセリフを繰り返すレイフォン。

一方、アーク公爵は威厳たっぷりにこう言った。

「“聞こえるか? どうしてこんなところに倒れている?”」

「“……分かりません。覚えてないんです、何も”」

「“ふむ……気絶のショックで記憶がはっきりしないようだな”」


うお、すげぇ……

何度も画面で見た映像……オープニングイベントが、眼前でそっくりそのまま再現されていた。

何十回と聞いたイベント会話を繰り広げるレイフォンとアーク公爵。

最初はちょっと感動したが、すぐに飽きが来てしまう。

序盤の会話ってダラダラ長いわりにあんまり重要じゃないんだよなぁ。世界観の説明とかばっかりで。あの調子だと、会話が終わるまでもう少し時間がかかるだろう。


オレは暇潰しに手近な調査隊員の一人に声をかける。

「あの……」

だが、反応がない。

「……? ねえ、ちょっと」

「……」

ダンマリだ。不審に思ったオレはその調査隊員の顔を覗き込んで――ギョッとした。

調査隊の人間は全員警戒のポーズこそ取っているものの、全員無表情。そしてその目からは先ほどのレイフォンと同じように光が失われて、ロボットみたいになっていたのだ。


それは異様な光景だった。

得体の知れない不気味さが、この空間を支配している。


……おい、なんだよ。さっきまで元気だったのに、急にNPCみたいになりやがって。

そう考えて、ハッとする。

まさかこいつら、

するとやっぱり、ここはゲームの世界なのか?


分からない。分からないことが多すぎる。

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