第9話:主人公
オレの同行を認めてくれた
ゲームをプレイしていたオレからすると、アーク公爵がこんなに有能っぽい人物だとは思わなかった。てっきりネロと同じような典型的なクズだと思っていたのだが、どうやらその認識は間違っていたらしい。
オレが何故この人のことをそんな風に思っていたかというと……まあ、それは時が来れば分かることか。今はこの話はよそう。
ちなみに、オレはアーク公爵から「時間になったら玄関前に来るように」と言われただけだったから、特に何も準備せずに集合したんだけど、そこで待ち受けていたものはオレ専用の神輿みたいな天蓋付きの人力車だった。平安時代の貴族が乗るようなやつ。それを見た時は思わず噴き出しちゃったね。
鎧越しでも分かるほどのガタイの良いマッスルマンが「さあどうぞ」と言ってきたので、マジかよと思いつつ乗車。すると、そのマッスルマンが運転席(っていうのかな、人力車の場合?)の位置に付いて「よいしょぉ!」と車を引っ張り始めた。
この人力車には天蓋から長いカーテンが四方に垂れ下がっていて、外の景色を見ることができない造りになっている。
というわけで、オレは王都の街並みを一切見ることなく廃遺跡までやってきたのだった。
◇ ◇ ◇
さて、現在オレたちがいるのは突如出現した正体不明の建築物……つまり、
おお、やっぱりゲームと同じ見た目をしているな。
調査隊の人は車夫役を務めてくれているマッスルマンを含め、最大限の警戒をしているようだ。アーク公爵は二名の調査隊員に脇を固められているが、本人も注意深く辺りを見ているように思える。
だけど、まだここは
ま、オレがそのことを言っても信じてもらえるはずないから、黙ってるんだけどね。
だから、観光気分で呑気に構えていられるのはオレだけ。聖地巡礼みたいな感じがしてテンション高く鼻唄を歌ってたら、隊員の一人に睨まれちゃったのは内緒だ。
そうこうしているうちに調査隊(オレ含む)は遺跡の奥地に辿り着く。そして――
――いた。
ボロ着をまとい、うつ伏せに倒れている金髪の少年。
間違いない。
あれがレイフォン・ルーヴェ――このゲームの主人公だ。
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