第20話
☆☆☆
「これを見てくれ」
明宏は過去の出来事を全員へ説明したあと、首切り人だった人たちの一覧を表示させた。
明治45年のイケニエの首を切ったのは5人。
その中に原田という名字があったのだ。
「原田って智子の名字じゃない!?」
すぐに気が付いて佳奈が叫ぶ。
明宏は頷いた。
「他の奴らの名字はわからないけれど、あの3人はやけに地蔵についてもイケニエについても詳しかったよな。きっとこの儀式関係者だったんだ!」
明宏の憶測は正しかった。
智子が人殺しと呼ばれたことも、一生があの家の子供だと言われたことも、すべてが関係している。
「もう少しあいつらと話をする必要がありそうだな」
大輔はそう言い、無意識に指の骨をバキバキと鳴らしたのだった。
☆☆☆
それから一度家に戻って仮眠をとった3人は夜になるのを待った。
今日も彼らの仲間の誰かが犠牲になるはずだ。
だけど彼らは首を探さない。
首が地蔵についたことを確認するために、あそこにいるだけだ。
「そろそろ行こうか」
クローゼットを開けて慎也の体に抱きついていた佳奈は、その声に顔を上げた。
ドアの前に立っているのは明宏だ。
その後ろには春香と大輔もいる。
その手には武器が握りしめられて佳奈はとまどった。
「その武器を持って行くの?」
「あぁ。化け物相手には使わないけどな」
大輔がバッドを握りしめて答える。
化け物相手じゃないとすれば、使うのは彼らに対してなのだろう。
一瞬そんなことをしてもいいのかと考えたが、彼らは大輔に銃口を突きつけているのだ。
これくらい準備して置かないと本当に殺されてしまうかもしれない。
「わかった行こう」
佳奈は慎也の体を優しくなでて、クローゼットを閉めたのだった。
☆☆☆
深夜1時過ぎに地蔵へ到着すると想像通り彼らはやってきていた。
昨日と同じようにブルーシートをしいて酒盛りをしている。
「なにあんたたち、また来たの?」
少しお酒が入っている様子の智子が言う。
「あの巨体の首が取られたのか」
大輔が2人になったイケニエたちを見て言う。
一番体の大きな一生の姿がなかった。
「だからなんだよ」
亮一は相変わらず猟銃を携えていて、それをずっと右手に持っている。
酒もほとんど飲んでいないようで、少しは周囲を警戒していることがわかった。
この街を壊滅させたいわりに、自分の身は守りたいのだろう。
「お前らの名字を教えろ」
大輔の言葉に智子と亮一は動きを止めた。
今日も首を探せとか、運べといったおせっかいを焼いてくるのだと思っていたので、その言葉は予想外だったのだ。
同時に佳奈たちが過去を探っていることを理解した。
「そんなの教える義理はねぇよ」
亮一が不機嫌さを隠さずに答える。
智子は少し後ろに下がって4人を睨みつけた。
「工藤に本間に中村に柏木。そして原田じゃないのか?」
明宏が覚えてきた名字を口に出す。
最後の原田だけ、智子へ視線を向けた。
2人は明らかにたじろいだ様子で明宏を見つめる。
その視線は泳いでいた。
「明治45年に首切りを行った5人の名前だ。お前達がイジメられたり、蔑まれてきたのはこの歴史があるからか?」
続けられた質問に智子はカッと頭に血が登っていくのを感じた。
「うるさい!」
叫び声を上げてビールの缶を投げつける。
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