陰キャデブの僕、ダンジョンで修行して最強暗殺者になる~ダンジョン配信中のS級美少女を助けて、うっかりバズってしまう。え? 僕専門のまとめサイトができた……そんなまさか~

路紬

第1話 陰キャ、追放されて深層に突き落とされる

「はーい! 今回の配信はうちのパーティに必要のない人を追放してみた! でーす!!」


 陽気な声がダンジョン内に響き渡る。


 浮遊する球体型カメラに向かって話しかけているのは、僕が所属するパーティーのリーダー。名前は鬼塚アキラ。


 彼は陽キャ特有の明るい声でこう続けるのであった。


「え〜〜皆さんもお分かりの通り! うちのパーティーには一人役立たずがいます! 俺たちももうそろそろBランクパーティー! なので、そのBランクに上がる前にその役立たずを追放してみようと思います!!」


「うわーー誰なんだーー! その役立たずっていうのはーー!」


「気になるぜリーダー! 早く教えてくれーー! そんな役立たず……金食い虫なんか許しておけねえよ!!」


 棒読みであからさまなセリフを口にするアキラの取り巻きたち。


 上がっていく同接数。球体型カメラが空中に投影している配信画面にはコメント欄や同接人数、チャンネル登録者数など、様々な情報が映し出されている。


 そのコメント欄には……。


"趣味悪すぎ〜〜!"

"アキラくんの足引っ張ってるやつとか許せないんだけど!"

"どうせあのインキャでしょ? 早く追放しなよww"


 と、身内の取り巻きの女子たちがコメントしていた。


 そしてアキラの視線が僕に向く。アキラはニヤリと下卑た視線を僕に向ける。


「追放するのは陰キャで役立たずのケイくんでーす!!! おら、さっさと前に出てこいよっ!」


「ケイくーん! 俺たちのリーダーがお呼びだぜ〜〜!! さっさといけオラっ!」


「ほんんんんっとウスノロだなお前! 配信止まっちゃう止まっちゃう!! 君のせいでまーた放送事故が起きちゃうよ〜〜!!」


"ほんとキモすぎあの陰キャ"

"マジで遅いんですけど〜〜?"


 僕——鞍馬くらまケイは陽キャの取り巻きに背中を蹴飛ばされながら前に押し出される。


 僕はアキラを中心とする陽キャグループのパシリだ。学校ではもちろん、放課後にダンジョンに連れ込んでは僕をダシにしていじめの配信を行なっている。


 アキラたちが僕に目をつけたのは、僕の外見からだろう。ぽっちゃりとした身体にボサボサの髪、俗に言うコミュ障故の挙動不審さ。


 高校の入学式でアキラから目をつけられて以来、二年生の夏になる今の今まで。僕はほぼ毎日、彼らからのいじめを受けていた。


「最近さ、過激なことを望んでるセンパイが多くてよ。いつもの配信内容じゃ足りないとか言い出すんだわ」


「そ、それで……今日は何を……」


「おいおい、お前の目は節穴か? アア!? ここにあるんだろうがよ……深層へ一方通行の大穴」


 今、僕たちがいるのはとある大型ダンジョンの上層。そこには誰も近寄らない奈落への道というのがあった。


 ダンジョンは普通上層、中層、下層、深層と別れている。下に行けば行くほど危険度は増していく。


 そして普通は階層を順番に降らないといけない。けれどこのダンジョンにはがある。それがこの奈落への道だ。


 ここは上層から深層に行くことができる唯一の道。ただ、ここから落ちたら最後。一方通行で危険な魔物やギミックが蔓延る深層を登らないといけない。


 深層まで行ける探索者は、全世界の探索者の中でも上位数パーセント。人数にして百人も満たないだろう。


 つまり、ここに落ちたら死は確定。それがこの奈落への道だ。


「今日は夏休み直前企画〜〜!! 題して陰キャを奈落への道に突き落としてみた! も兼ねているんだよなあ! 追放もセンパイの要求も両方やっちゃう俺って天才?」


「まあまあ、前に書類にサインさせたろ? あれさ、ダンジョン保険なんだよな! お前が死んだり行方不明になれば、俺たちはその金で夏休み豪遊できちゃうってわけ!!」


「なーに、夏休みまであと少し。誰もお前が来なくなったくらい疑問に思わねえよ! むしろ、引きこもったとか言われちゃうかもなぷふふふふふ!!!」


 そ、それだけはやめてほしい。


 他のことならなんだってやる。魔法で攻撃されても、魔物に襲われても、死なない今までのやつだったらなんでもやっていい。


 けれど、これだけはダメだ。僕が死ねば家族が……お母さんが心配する。片親で必死に育ててくれたお母さんが、いい高校といい大学に行きなさいと通わせてくれた私立高校。


 朝から夜遅くまで一人で働いていて、通わせてくれたのに。大切に思ってくれる人なのに……。


 僕が死ねば悲しむ。死ぬだけなんてこと絶対ダメだ……!


「お、お願いします。ほ、他のことならなんでもやります。だからそれだけは……どうか!」


「ギャハハハ土下座なんかしてるぜこいつ! ダッセ〜〜!!」


「残念だけどさ、センパイが見たがってるからさ、そういうの無理っていうわけ!!」


 アキラが僕のことを蹴り飛ばす。奈落への道直前まで転がる僕の身体。あと数センチ後ろに行けば落ちてしまう。そんな状況で立ち上がろうとしたのが、僕の運の尽きだった。


 ガラリと、崩れる地面。僕は必死に手を伸ばして、地面を掴もうとするけど、それも無駄。僕の身体はあっさりと奈落へと落ちていく。


「ギャハハハ!!! 出られるなら出てみな!!」


「今回の配信大成功!! これでセンパイたちからお金がもらえるってわけよ!!」


「じゃーな!! 陰キャくん! 俺たちは新しいおもちゃ見つけて楽しむからさ!!」


 そんな笑い声だけが虚しく響き、僕は暗い深層へと落ちていくのであった。


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