第9話 陰キャ、イレギュラーを蹂躙する
『キシャアアア!!!』
スケルトンライダーが突進しながら槍を突き出してくる。カウンターシールドで防いで暗殺者の一撃を試みたが、その瞬間だ。
『シャッ!!』
「そっちもかよ!!」
デスナイトが騎士剣を振い、それを妨害してくる。キメラの爪で防ぎつつ、僕は後ろに跳ぶ。
状況は不利。こちらはただでさえ、正面戦闘が苦手だと言うのに、二対一の状況。カウンター狙いの暗殺者の一撃も隙を狩られてしまう。
暗殺者に多対一を有利に進めるスキルは、暗器にしかない。今、それを伸ばす余裕も、暗器もないため、それに頼ることなくこの状況を切り抜けないと。
「いいね……燃えてきた」
難しいほど熱くなれる。
壁が大きいほど乗り越えた時の快感が大きい。僕は流れる汗を舌で舐め取りながら、スケルトンライダーとデスナイトを見据える。
『カラララララ、キルララララ!!!』
召喚を終えたデスリッチが再び魔法の連打を始める。それに呼応して動き出す二体の魔物。魔法、突撃、その後に控えている攻撃……手早く処理しろ!
「マジックカウンターシールド!」
『キシャ!?』
デスリッチが放った魔法をデスナイトへ向けて反射する。デスリッチは魔法で迎撃したけど、デスナイトは騎士剣と盾しかない。盾で防いでいる数秒、この数秒以内で……。
『キシャアアア!!』
「見えてんだよ……っ!!」
スケルトンライダーの突進攻撃に対してカウンターシールドで弾きながら、上に跳躍。僅かに体勢が揺らいだその隙を狙って!
「
頭蓋もろとも全身を砕く、暗殺者の一撃!
スケルトンライダーはバラバラになって崩れ、デスナイトが駆け寄ってくる。ただ、魔法の支援込みとはいえ、状況はほぼ一対一。ならばいくらでもやりようはある!
『シャアアッッ!』
「おそ……いっ!」
騎士剣をキメラの爪で防ぎつつ、キメラの爪で反撃。キメラの爪が鎧に亀裂を入れる。それで攻撃判定となったのか、視界に文字が浮かび上がる。
【判定成功。剣術のスキルを一時取得します】
剣術のスキル……今もらったところでなんの役にも立たない!
けどこれでキメラの爪の効果は実感できた。攻撃力も高く、爪自体も頑丈でちょっとやそっとじゃ傷がついたり削れたりしない。
そして亀裂が入った鎧。僅かに開いた隙間。
そこに暗殺者の剣をねじ込むことができるはず……!
『キシャアアアア!!』
「カウンターシールド!」
騎士剣を弾いてデスナイトの体勢を崩す。全身を鎧で覆われているデスナイトの急所に攻撃を通すのは簡単ではない。
けどキメラの爪での攻撃で鎧には何本かの亀裂がある。それさえあれば!
「
繰り出される高速の一閃。薄い刃が鎧の亀裂に潜り込み、デスナイトの核を貫く。それだけでは終わらせず、キメラの爪で追撃を加えてより確実にとどめを刺す。
『き……しゃ……』
デスナイトが消滅する。ドロップしたアイテムに目もくれず、僕はデスリッチへと向かう。
「絶対倒す!」
『カキルアアアアアア!!!』
激しくなる魔法の連打。それをキメラの爪とマジックカウンターシールドで弾いていく。
暗殺者は攻撃方法が近中距離に偏っている。装備さえあればほぼ全ての距離に対応できる狩人とは違い、暗殺者はロングレンジでの戦いを得意としていない。
ただ、相手が魔法を使っていて、かつ中距離で、マジックカウンターシールドがある際、使用可能となる暗殺者の一撃が存在する。
『ルルルル……キルルルルリャアアアアア!!!』
デスリッチが錫杖を前に突き出す。勢いが衰えない魔法の連打に加えて、あの体勢……大魔法でも使う気なのか!?
「やるか……どうする!?」
判断できる猶予は一瞬。
僕は息を吐き出し、自らデスリッチへと突っ込んでいく。
錫杖の先に集まっていく炎。それは渦巻いて球体となり、どんどんと大きくなっていく。僕が後二歩でデスリッチに接敵する瞬間だ。
『キャアアアアア!!!』
特大の火球が放たれる。衝突まで後……!!
「マジック……カウンターシールドっ!!」
身体を地面に滑り込ませるようにスライディングしつつ、マジックカウンターシールドを展開。
マジックカウンターと火球の衝突しているところを支点にして、僕は空中で一回転する。上空に飛び上がった僕は落下しながら、デスリッチに近付く……!
『キルアアアア!!!』
「お……そいっ!」
魔法を使おうと錫杖を振るデスリッチ。その錫杖を足で踏みつけて、体勢を崩しながらデスリッチの頭部を鷲掴んでの一閃!
「
暗殺者の一撃は相手が無防備であれば決まる即死の技。相手より高いところから急落下して、相手を抑えつけることさえできれば、成立する暗殺者の一撃は存在する。
それが、
マジックカウンターシールドは魔法を捉えることができる。その特性を活かせれば、通常よりも飛距離と高さを稼げるのでは? と思ったのだ。
『き……ルル……ダララララ!!!』
「これで終わりだよ……デスリッチ!」
暗殺者の剣を貫いたまま、袈裟に滑らせて斬り裂く。錫杖を奪い、錫杖の先端でデスリッチの全身を攻撃する。まるで中国映画に出てくる棒術使いのように。
急所である核を貫かれて全身の骨を錫杖で砕かれてもなお、デスリッチの核は再生しようとしている。やはり
『キリャアアアアアア!!!!』
突如、全身を砕かれたデスリッチが雄叫びを上げる。
「な、なに!?」
突然の雄叫びに少し驚いたけど、デスリッチから何か光るものが飛び出したかと思うと、それは上の階層へと登っていき、デスリッチの全身が風化して消えていく。
【規◼️外の◼️物の◼️◼️に◼️◼️◼️◼️◼️◼️】
なんだ……?
「文字化けしている?」
進化体が何かをしようとしているというのはわかる。けれど上手くできていない感じだ。
その次の瞬間だ。新たな文字が浮かび上がる。
【
【危険察知のスキルが感知。
中層にて
「マジ……か、嘘でしょ!?」
二連続の
いや、もしかしたらデスリッチとの戦いは終わっていないのか……?
ここから中層……。急いで行けば十分でいけるか!? 初見の下層、さらに混沌としていくダンジョンの中を……?
「行くしかない……!!」
これがもし、デスリッチによる最後の足掻きだとしたらいいだろう。次こそは必ず。
「絶対に倒してやる……!」
僕はそう決意してダンジョンを駆け上がっていくのであった。
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