第8話 陰キャ、イレギュラーと遭遇する

 ——ズズン。ズズン、ズズン。


 そんな地響きで僕は目を覚ます。爆発だろうか……? かなり大規模だけど深層までは影響なさそう……いや。


「魔物が活発化している……爆発のせいか」


 気配感知で感知している魔物の動きが慌ただしい。爆発だけでこんなに動きが活発化するものなのか?


 いや、下層の魔物が流れ込んできているのか。爆発の影響で下層の魔物がパニックになり、それが深層まで流れ込んできたことで、深層も慌ただしくなっている。


「これはチャンスだね」


 慌ただしい今なら魔物の警戒も周囲に散っているから、隠密行動でより抜けやすくなっているだろう。


 どれくらいの時間寝たのか分からないけど、全身はかなり軽くなっている!


「よし、行こう……!」


 僕は壁走りを駆使してダンジョンの上へと登っていく。


 その道中、深層はより混沌とかしていた。


『ギャオオオオオス!!』

『シャアアア!!』

『クエッ! クエーークエクエクエクエエエエッッ!!』

『グルルルアアア!!』


「魔物と魔物が殺し合ってる……昨日の比じゃない」


 昨日、深層の魔物相手に一撃で屠ったキメラ。それが周囲の魔物に取り囲まれて、なすすべなく殺されてしまう。


 キメラが倒れたかと思ったら、次は隣の魔物、目についた魔物、味方とか敵とか同族とか関係ない。


 魔物同士の乱戦。隠密能力が高い僕なら難なく切り抜けられるけど……。


「一体上で何が起きたんだ?」


 僕は深層を抜けて下層に突入する。下層に駆け上がったらその瞬間だ。


 僕を襲う無数の雷魔法が飛んできた。


「あっぶな!?」


 キメラの爪を展開。雷魔法をキメラの爪で受け止める。流石は深層の魔物からドロップした武器。難なく受け止めることはできるけど……。


「どうやって僕を感知した……!?」


 深層の魔物ですら気が付かないような隠密性能はある。そんな僕を下層の魔物が感知できるはずがない。ということはまぐれ……例えば魔法系スキルを使う魔物の自動攻撃とか……?


「いや、どうも違うねこれは」


 天井に着地しながら、下を見る。


 黒いローブを全身に纏い、大きさ一メートル五十はあるだろう錫杖を持っている人型の魔物。


 頭がゆっくりと動いて、僕の姿を捉える。ローブの下、そこにあった顔は……。


「スケルトン……っ!?」


 人の屍スケルトンだった。


 人間の皮や肉体が全てこそぎ落ちて、骸骨だけになった身体。それは瞳なき双眸でたしかに僕のことを見つめていた。


『キルル……カ、ララララ!!!』


 詠唱。


 スケルトンの背後に現れる大小色様々な無数の魔法陣。一斉に展開されたそれらは炎や水、雷、風を発射してくる。


「こんなに魔法を使うスケルトンなんているの!?!?」


 僕は超突進や壁走りを駆使してそれを回避、キメラの爪で弾き返す。


 魔法を使うスケルトン系の魔物にはいくつか心当たりがある。けれど、こんなふうに雨あられのように魔法を使うスケルトンなんて聞いたことがない。


 魔法を使うスケルトンの中で最上位と呼ばれているのはリッチ。しかし、こいつは僕がネットで見たことがあるようなリッチよりも遥かに大規模な魔法を使っている。


「鑑定で見抜けるかな」


 暗殺者のスキルツリーにスキルポイントを割きすぎたせいで、鑑定などの基本的なスキルはあまり伸ばせていない。


 鑑定で魔物の種類とかは見ることができるけど、鑑定のスキルを強化していないと上位の魔物は完全に見抜くことはできないのだ。


 けれど、多少情報を見抜けたら、何かの役に立つかもしれない。


 僕は淡い期待を抱きながら鑑定のスキルを使う。


【デスリッチ

 詳細不明】


 デスリッチということはリッチのさらに上位種……!?


 リッチは下層から深層にかけて出現する魔物。その上位種となれば深層の深部にて現れる魔物のはず……。


 それが下層にいるのはおかしい。もしかしてこれは。


規格外イレギュラー……!」


 規格外イレギュラーとはダンジョンにおいてごく稀に発生する現象のことだ。


 ダンジョンの地形が変化したり、普段出てこないような異様に強い魔物が出現したりと……これが発生している間は、探索者に避難勧告が出されるほどだ。


 もしかしたらあの爆発……あの爆発のせいで発生したのか……?


 けど爆心地から遠い下層で……いや、考えるのは後だ。まずはこれを倒さなきゃ前に進めない。


『クルルルルキリャアアアア!!!』


 さらに勢いを増す魔法の連打。このまま魔法の連打を喰らい続けると、いつしか捌ききれなくなる……!


「……スキルポイント! 足りてる!!」


 キメラとの戦いで得たスキルポイント。これを全て暗殺者の一撃と暗殺者の剣の強化につぎ込む。


「マジックカウンターシールド……!」


 降りかかる魔法を、暗殺者の剣のカウンターシールドで弾く。気休め程度だが、これで距離を詰めるしか……ないっ!!


『カルルルル! ルルルオアアア!!』


「嘘でしょ……?」


 デスリッチが魔法の連打を止めたかと思うと、魔法陣から二体の魔物が現れる。


「スケルトンライダーとデスナイト……!」


 全身に鎧を纏ったスケルトンの騎士と、骸骨の馬に乗ったスケルトン。


 スケルトン系の上位種。スケルトンでも正面戦闘に長けた二体を、僕は今から相手にしなくちゃならない……!!



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