第6話 陰キャ、キメラを蹂躙する
『ゲコゲコゲコ! ゲェーーーコ!!!』
先に仕掛けたのはカエル。体長一メートル弱の全身が黄色の巨大カエルだ。カエルは口元から液体を蛇とライオンへ目掛けて吐き出す。
二匹の魔物はそれを回避し、液体が地面に付着すると煙と臭いを立ててその部分が溶ける。
「あれは……酸!? ということはあれはアシッドトードか!!」
アシッドトード。強酸の液体を吐き出して攻撃する深層の魔物。酸に耐性がない防具は一瞬で溶かされてしまい、武器も溶かされてしまう。
小さいサイズが下層でも目撃されており、階層主として中層でも出現することがあるらしい。この魔物による被害はかなり大きく、探索者の間ではかなり危険視されている魔物だ。
『キシャアアアア!!』
次に動き出したのは蛇。蛇は目から光を放つ。うわまじか。今時のアニメとか漫画でもやらないぞ目からビーム。
『グルっ!?』
『ゲコっ!?』
二体の魔物が光にかする。掠った部分が急速に石化し始めた! 石化する蛇……となるとあれは!
「メドゥーサの使い魔……! すごいあんな魔物も深層にはいるのか!」
見ただけで人を石化させてしまう神話の化け物メドゥーサ。
あれはその使い魔である蛇だろう。一部のダンジョンでは神話や伝承で出てくるような魔物、高い知能を持ち人間のように活動する存在も確認されている。
神話の化け物の使い魔くらい出てきてもおかしくないということか!
『ガルっ!』
しかし、どんなに強そうな魔物とはいえ、百獣の王、ライオンをモチーフとした魔物には大した敵ではない。
そう言わんばかりに、前足を軽く振るうライオン。次の瞬間、突風が吹いたかと思うとアシッドトードは細切れに、メドゥーサの使い魔は上下で真っ二つになる。
『キシャア……キシャアアアア!!』
「あれで生きてるのか……!」
流石は神話の化け物の使い魔。アシッドトードは消滅して魔石だけになったが、メドゥーサの使い魔はまだ生きて、ライオンを威嚇している。
そんな威嚇するメドゥーサの使い魔をライオンは頭から食べた。そしてすぐに起こる異変。
ライオンの尻尾が蛇に変貌し、今まで折り畳んでいた翼を広げた。
あれはただのライオンではない。獅子をモチーフとした有名な魔物。
「……キメラか!!」
キメラ。中層か下層の階層主として現れ、深層にも現れる凶暴な魔物だ。
キメラの特徴は魔物を喰うことで、その魔物の能力な身体を得るというもの。
つまり食べれば食べるほど強くなる。今の僕みたいに。
なら、倒すしかないだろう。心臓から何か有益なスキルやスキルツリーを得られるかもしれない。
僕は壁走りのスキルを使い、壁伝いに移動、超突進に比べたらこのスキルはかなり使いやすい。地面を走るように壁や天井を走れるだけのスキルだからだ。
キメラの完全な死角から一気にやる……!
「
暗殺者の剣がキメラの首を突き刺す。飛び散る血。キメラは自分が攻撃されたのを悟って暴れ出す。
『ガルルルル!! グルルルアアア!!』
「ま、まじぃ!?」
キメラは身体を大きく振って、僕を投げ飛ばす。僕は咄嗟に暗殺者の剣を格納しつつ、着地する。危なかった……あのまま暗殺者の剣を刺したままにしていたら折れていたかもしれない。
「というかやっばいねこれ」
『グルルルル……!!』
首から大量の血液を噴き出しながらもなお戦意が萎えないどころか高まるキメラ。
暗殺者の一撃は基本的に即死だ。ただし例外はある。
暗殺者の一撃はダメージを少しでも与えないと即死判定まで持ち込めない。けど今回は大量の血液が流れ出しているため、ダメージがないということはないだろう。
考えられるとしたら、キメラには残機がある可能性。命を複数個所持するような魔物には暗殺者の一撃はかなり不利だ。
暗殺者の一撃はよほどスキルツリーを伸ばさない限り、一回の発動で一つの命しか奪えない。一つの個体で複数の命を持つ相手の場合、その命の数だけ暗殺者の一撃を決める必要がある。
キメラは魔物を取り込む魔物。恐らく、先程のメドゥーサの使い魔を取り込んだ際に、その命も取り込んだのだろう。
僕は少なくとももう一回、暗殺者の一撃を決めるしかない。
「逃げるか、正面突破か……。そりゃあもちろん!」
僕は足に力を込める。キメラに向けて走り出し、キメラの間合いにわざと入り込む。
『ガルア!!』
「ふっ!」
キメラの攻撃を躱す、躱す、躱す!
キメラが大きく噛みつこうとしたその瞬間、僕は先程、暗殺者の剣に仕込んだ新たなギミックを作動させる。
「カウンターシールド!」
キメラの顎を目掛けて左手を潜り込ませて、カウンターシールドを展開。キメラの頭部を上に向かって弾く。
カウンターシールド。暗殺者の剣に仕込めるギミックの一つ。この盾は防ぐではなく、弾くことに特化しており、攻撃を防いでも多少のダメージカットにしかならない。
しかし、敵の攻撃に合わせて展開、弾くことで敵の体勢を大きく崩せるのだ。
そして暗殺者の一撃には、相手が体勢を崩した際に発動可能となるものが存在している。その名を。
「
キメラの首を突き刺し、そのまま滑らせるように胸まで斬り裂く一閃!
『ガ……ガルっ……』
ばたりと倒れるキメラ。キメラの身体は消滅し、アイテムを落とす。
「これは魔石と……心臓! そして……!」
キメラが落としたものは三つ。魔石と心臓、そして爪だ。
爪はただの爪ではない。腕にはめることができる爪型の武器。僕は早速、その武器を手に取る。
【キメラの爪
ソロボーナス品。武器として使用可能。
手にはめて使用する。攻撃モーションに合わせて爪が展開する。この武器で魔物を攻撃すると確率で、一定時間魔物の属性や能力を取り込むことが可能。攻撃を与えるたび、この判定は行われ、時間は上乗せされていく】
「魔物の属性と能力を取り込む……。確率だから確定ではないけど、使いこなせたらかなり強そうだ……!」
一部の魔物は単独で倒すと、確定でドロップするアイテムがある。
キメラの爪。キメラの深層の魔物を斬り裂く攻撃力と、キメラの魔物の属性や能力を取り込む能力を使えるようになる。
これはかなり強力な武器だ。取り込む能力は確率だからアテにしすぎるのは危険だけど、逆にいえば発動さえすれば不利な状況をひっくり返せるポテンシャルはある。
暗殺者の剣での一撃必殺。
キメラの爪による起死回生の手札。
あと一つ。強力なメインウェポンが欲しいところだ。
「今はこれでも十分心強い。さて、キメラの心臓は……」
僕はキメラの心臓を手に取り、その効果を見る。
【キメラの心臓
レアドロップ品。食用の素材。
食べると吸収のスキルを得る。また食べた際に魔法能力以外の全ての能力を強化できる】
魔法能力以外の全ての強化……!
これはすごい効果だ。さらに吸収というスキル。このスキルも気になる。もしかしたら深層をより安全に突破できる手札になるかもしれない。
「そのスキル……効果はどんなものかな」
僕はそう呟いて心臓を飲み込む。さて、吸収のスキル。その効果はどんなものだろうか……。
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