第19話 陰キャ、S級美少女と装備品を買いに行く

 彼女が微笑む中、僕は切り抜き動画に再び視線を移す。た、確かに僕だ。自分ではそんなつもりなかったけど、僕ってこんなにも動いていたんだ……。


 ダンジョンで活躍する探索者は多けれど、こんなに動く探索者は少ないだろう。


 特に暗殺者の一撃 アサシネイト対空型エアリアルのところ。ここについてのコメントがダントツに多い。


『飛んでるww』

『近接武器で対空攻撃をやる化け物』

『まさに鬼才』


 確かにあれは超突進の突進力を跳躍に重ねることで普段では考えられないほどの、跳躍をしている。ほぼ空を飛ぶような高度まで飛び上がれるから、側からみたら面白いんだろうなこれ……。


 それに動画という客観的な視点で自分を見て気がつくことがある。


 僕の姿って、他の人にはほとんど見えていないんだ……。暗殺者の隠密能力の高さ……凄いな、カメラさえも僕を正確に捉えることは不可能だとでも言うのか。


「ちなみに切り抜きの元は私の視聴者が作ったみたいよ。私も拡散はしたけれど、まさか一夜にしてこんなにも出回るなんて思ってもいなかったわ」


「拡散したんですか……。しかし凄い出回りようですね……」


 ネットの力というのは凄いものだと感心するしかない。声でワンチャンバレる可能性はあるけど、姿が見えていないため、確信に至る人は少ないだろう……多分。


「この動画見て思ったのだけど、貴方装備はどうしたのかしら?」


「装備……? ああ、僕、あの時、訳あってほとんど無しだったんです……。あったのはキメラの爪とスキルツリー解放でもらえる暗殺者の剣くらい」


「……え? そ、それで深層から……え?」


 ああそうか、僕が深層に落とされたことを知っているのかこの人は。


 深層からほぼ装備品なし、道具なしで這い上がるなんて普通じゃ考えられないだろう。僕だって神域水と出会っていなければ不可能だったはずだ。


「分かったわ。今から装備品を買いに行きましょう。後、探索者として必要な道具も」


「え、いや……それくらいダンジョンに通ってお金貯めてから自分で揃えますし」


「い、い、か、ら! 普通こういうのは先輩探索者が一から教えるものよ! でも、君はいじめ目的で探索者にさせられた……授業である程度のことは習っているでしょうけど、実践的なところは教えてあげるわ。

 これも私の奢りにしてあげる」


 何から何まで、全部面倒を見てもらっている気分だ……。命の恩人なのは確かだけど、そこまでしなくていいのになあとは少し思ってしまう。


「じゃあよろしくお願いします」


「ええ、私に任せなさい」


 僕たちは昼食を済ませて、早速新都会駅に探索者向けの専門店がある区画へと向かう。


 新都会駅はダンジョン探索のために作られた駅。当然探索者をサポートするような施設が多く入っている。


 ダンジョンで取れる鉱石素材や現実の鉄や鋼などを加工して武器や防具にする鍛冶屋。


 植物素材を主に様々な配合を行なって作られる魔法薬店。


 探索者には必須の様々な便利道具が置いてある魔道具店など。専門店の数は数百にも及ぶ。


「先ずは装備品ね。君のメインにしているスキルツリーは暗殺者でいいかしら?」


「そうですね、今のところは暗殺者です」


「そう。じゃあ、金属製パーツが少ないものにしたいわね」


 探索者はメインに解放を進めているスキルツリーにあった装備品を選ぶ。僕の場合は暗殺者なので、それにあった装備品を選ばなくちゃいけない。


 暗殺者となると隠密性や機動力を確保するために、重たい装備を嫌う傾向にある。動きやすく、かつそれなりに防御力が確保されている装備。これが暗殺者の装備品としては理想だ。


「これとかどうかしら?」


「これって……これですか!?」


 彼女が出してきたのは身体にフィットする黒いアクションスーツみたいな装備品だ。触った感じ生地は見た目に反してかなり厚みがある。けど、これは流石に……!


「これだけだと……その、何というか恥ずかしいっていうか……!!」


「これは下地よ下地。肌着みたいなものよ。この上にプレートアーマーとかつけていくわ。だからほら、早くきてちょうだい」


「……はい」


 僕は促されるがままそれに着替える。今までの身体的なコンプレックスのせいか、体型が変わった今でもこういうのを着るのは何だか恥ずかしい……!


 けど来てみた感じはかなり良さげだ。重くなく、動きやすい。ここにプレートアーマーがついても問題なく動けそうだ。


「じゃあこれとこれと……これもいいわね。腰のベルトはこれにして……」


 彼女はテキパキとプレートアーマーやベルトを選び、一瞬にして装備が完成する。


 プレートアーマーは急所を守るために一部分だけ。ベルトにはポーチが備え付けられており、道具を取り出す際に便利な作りになっている。その上に身を隠すための外套。


「うん、いいわね。どうかしら? 着心地は」


「凄いです。こんなにも着ているのに全然重さを感じません。動きやすさをあります」


 鏡に映っている自分を見る。確かにこれは暗殺者の風貌だろう。本格的に暗殺者になったのだと実感できる。


「そう、気に入りそう?」


「ありがとうございます神代さん。とても気に入りそうです」


「礼なんて言わなくていいと……まあいいわ、君は何度言ってもそう言ってしまうものね」


 と、少し柔らかい笑みを浮かべる彼女。装備品で思い出した。深層から脱出して地上に戻ってきた時、確保したいと思っていたものがもう一つあったことに。


「もう少しだけ付き合ってもらえませんか? 一つ探しているものがあるんです」


「探しているもの……? いいわよ、何を探しているのかしら?」


 キメラの爪、暗殺者の剣。これらは強力な武器だが、リーチや使用条件、形状的にメインウェポンとして運用していくのは心許ない。


 なら、メインウェポンとして新たに運用していくもの。それは……。


「剣を探しに行きたいんです」



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