第15話 陰キャ、S級美少女と再会する

 ダンジョンから帰ってきて翌日。僕はベットの上で目を覚ます。


「やっぱり我が家って落ち着くなあ」


 ダンジョンの深層で寝るよりも遥かに快適だ。


 昨夜帰ってきた僕は、お母さんに色々と聞かれて驚かれながらも無事事情を説明し終えた。お母さんは全て何も言わずに受け入れてくれて、僕は無事日常へと帰ってこれたのだ。


 ただ日常に帰ってくること。それはすなわち、また学校に行かなくちゃいけないということだ。


「はあ……憂鬱だ」


 アキラたちに何か言われると思うと、学校に行こうとする足が重くなる。


 けど学費を払ってもらっている以上、サボるわけにはいかない。それに今日さえ言ってしまえば夏休みが来る。


 夏休み期間中はアキラたちに会う心配もしなくていいので、少しだけ気が楽だ。


「……あ、制服」


 昨日まで着ていた制服がボロボロになっていたことを思い出す。予備の制服を押入れから引き出て、僕はそれに着替える。


 入学時、いつかは痩せるぞと思って買った予備の制服がサイズ小さめで良かった……。今ならちょうどいい感じに着られる。


「あれ……学生証」


 ふと昨日回収した鞄の中に学生証が入っていないことに気付く。アキラたちがとっていったんだろうか? それにしても財布やスマホが取られていないのは不自然だな……。


「アキラたちならいつも通り飽きたら返してくれるでしょ……はあ」


 アキラたちは人のものを勝手に取っては、それを使っていじめのネタにすることがある。飽きたら返してくれるというか、その辺に放置してくれるので、イジメの被害としては軽い方だ。


 学生証は最悪なくても困らないため、あまり気にしない。学割使うような機会もないし……。


「さて行くか」


 準備を終えた僕は学校へと向かう。


「ねえあの人カッコよくない?」

「あんな人うちの高校にいたっけ?」

「やだちょーイケメンじゃん」


 学校へ向かう道中、やたらと視線を感じる。聞こえてくる声も、誰かを褒めるようなものばかり。うちの高校、偏差値も高めなら顔面偏差値も割と高めなんだよな……あ、僕をのぞいて。


 教室に到着した僕は自分の席で授業の準備を始める……って、なんか周囲の人がざわついていないか?


「あそこってあの陰キャの席よね? 誰なのあのイケメン?」

「転校生か? それにしては夏休み前に急すぎるだろ」

「でも爽やかでクールな感じが素敵! 私話しかけてみようかな」


 僕が教室に来るといつもは、嫌な感じにざわつく。けど今日は違う。なんだか全体的に色めきだっているのだ。


 そんな空気に困惑してるといつも通り、アキラたちがやってくる。


「おい、誰だお前。そこは陰キャの席だぞ? お前みてえな赤の他人が座る場所じゃねえ」


「もしかして転校生とか? 転校生にまで席取られるとかついてねえな陰キャくんは」


 アキラたちはどうやら僕のことを別人と勘違いしているみたいだ……。こ、こういう時なんて言おうか……。


 そんなことを考えている時だ。


 教室の扉が開く。


「失礼します。ここに鞍馬ケイさんはいないでしょうか?」


 入ってきたのは昨日の美少女。……え、どこかで見たことあるなと思ったらうちの生徒だったの?


 いやでも確か、全校集会とかでスピーチしてたな……。


「は、はい鞍馬ケイは僕ですけど……」


 僕は手を挙げてそう名乗り出る。その次の瞬間だ。教室中が驚きの声に溢れたのは。


「おいおいなんの冗談だよ! お前があの陰キャなわけ……!」


「何があったらそんな短期間で痩せるんだよ!? 嘘だろお前!!」


 近くにいるアキラたちが驚きの表情でそう口にする。


 そんな教室の驚きを気にも止めず、彼女は僕に近付いてきた。


「君、少し顔を貸してちょうだい。君に用事があるの」


 と、僕の前に立って彼女はそう言ってきたのだ。


 その言葉にさらに教室はざわめきに包まれる。


「経営科のお嬢様とどんな関係なんだ!?」

「あのイケメンが陰キャなのにも驚きなのに、一体どうなっているの!?」

「もう何が起きてるのかわからねえよ!!」


「お、おい。何かの間違いじゃねえか? 経営科のお嬢様よお! こんな陰キャに用事あるとか冗談だよな?」


「そんな陰キャと遊ぶよりも俺たちと遊んだほうが絶対楽しいから、俺たちと遊ばなーい?」


 そういうアキラたちに対して、彼女はギロリと鋭い眼光で睨みつける。……怖っ! あんな眼力で睨まれたら普通に心臓止まるわ!


「貴方たちに用事はありません。下がりなさい。今、私は彼と話をしようとしているところです。いい?」


 その一言だけで黙るアキラたち。す、すごい。誰も止められないアキラたちを一瞬にして黙らせるなんて……。


「ここは騒がしいわね。屋上にでも行きましょうか」


「え、あ、はい」


 取り敢えずこの人には逆らわないでおこう。そう思いつつ、僕はこの人の背中についていく。


「そ、それで僕に何のようですか?」


「君には昨日の礼と、これを渡しにきたのよ」


 彼女はそう言いながら僕の学生を差し出す。アキラたちが持っていったと思っていたけど、この人が持っていたのか!!


「あ、ありがとうございます。それで昨日の礼って?」


「貴方、かなり鈍いのね。昨日助けてくれたでしょ。その礼を言いにきたの!」


 そ、そういえばそんなこともあったなあ。あれはただ単純に僕の不始末を片付けるつもりだったけど、そんなふうに思われていたんだ。


「昨日助けられてから、もう君のことをずぅっっっと考えていていたの。ねえ、私はどんなことをすればいいと思うかしら?」


 ……なんか、すごいグラビティな言葉を言われてる気がするのは僕だけだろうか?



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