第7話 知る事実と共に

 美夢みむと共に歩く雄飛ゆうひは、彼女が何者なのかを考えていた。


(あの存在とこの子はどういう繋がりなんだ? いや、まさか……兄貴はこの子を狙った?)


 不思議な雰囲気を持つ彼女の事が気になるし、仁翔まさととの関係も気になる。いっそのこと聞いてしまえばとも思ったが、有無を言わせずに雄飛の手を引く美夢に何も言葉を返せなかった。


 ****


 その後電車に乗り、たどり着いたのは私有地の森の入り口だった。


「お、おい! 流石に私有地はまずいだろ」


「だいじょうぶ。ここ、ウチの所有地、だから」


 土地を持つ家柄という事は、この少女はそれなりの家柄なのだろう。


(だが……それとあの存在とどう繋がる? ここになにがあるんだ?)


 どんどん森の中を進んで行く美夢に着いて行くと、開けた場所に来た。森の中央にあるその場所には、石碑が建っていた。


「この石碑は……?」


「これは、出会いの記録……宇宙から来た存在と、出会った、ていう記録」


「宇宙から?」


「そう。あれは宇宙から、来たの……そして、貴方の……血筋に、不可思議な力を与えたの」


「な……!?」


(アイツは、宇宙から来たって? そんなんチートじゃねぇか!)


 雄飛が動揺する中、美夢は更なる事実を語り始める。その内容は衝撃的だった。


「そして、この星の人と子を成した。その血を、引くのが……私なの」


 ****


 雄飛達が石碑にいる頃。

 仁翔もまた、そこへ向かっていた。目的は……超常的存在の血を引く美夢だ。


(彼女を追い詰め、覚醒させるのが目的だった。だが今はそれはどうでもいい! 問題はあの氷使いだ!)


 彼の心は、強敵が現れた事が嬉しくて仕方ない。


(あの氷使いを倒せれば……更なる高みへ行ける! この国を正しい道へ、導く事が出来る!)


 歪んだ正義を貫くために、彼は突き進むと決めた。いや、それが自分の生まれた意味だとすら思っている。そこへ、英雄の声が響く。


 ――良いぞ! やはりお前だ! お前しかいない!

 ――為せ! 正義を! この世を正しき世界へ!

 ――貫け! そして、敵を倒せ!


(勿論ですよ……為してみせます。貴方の想いを引き継いで!!)


 ****


 二人の兄弟が、ぶつかり合うまであと少し……。

 一人は歪んだ正義を受け継ぎ、英雄えいゆうとなるため。

 一人は祖母の願いと、守りたい者を守るため。

 

 そのために、二人はこれからぶつかり合う事になる。

 

 ――対峙し、戦いが始まるまであと……。


 その果てがどうなるのか? 知る者はまだいない。

 少なくとも、この場においては……だが……。

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