第5話 祖母の想いと秘密
祖母、舞華の家はリフォームこそしているが、曾祖父が建てた頃から変わらない位置にあると雄飛は何度か聞いていた。
兄の仁翔は興味なさげだったが、雄飛はその話が何故だか好きだった。
(ばあちゃんが知っている事が聞ければ……何か掴めるかもしれない)
不安と期待を胸に、電車へ乗り込むとはやる気持ちを抑えながら、三駅先に着くのを待つ。そうして……駅の階段を駆け足で降りると、急いで改札を出て小走りで祖母、舞華の元へと向かうのだった。
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「祖母ちゃん、俺。雄飛だよ」
インターフォン越しに声をかけると、舞華の声がした。玄関に近づく足音がする。そして、扉が開くと雄飛の姿を確認した舞華は静かに家の中へと招き入れた。
歳を重ねても、祖母舞華の立ち振る舞いはお淑やかで気品がある。その上、素直に綺麗な人だと雄飛は思っている。
そんな祖母の瞳は、珍しく悲しげだ。
それこそ、いつかの兄、仁翔の正義を叫ぶ声を聞いた時以来の表情だった。
舞華は静かにお茶と菓子を出すと、雄飛を座布団に座らせ、自身は少し高めの座椅子に腰掛けた。そして静かに語りかけた。
「雄飛、貴方は……出会ったのでしょう? 超常的な存在と」
何故分かったのだろうかと、雄飛が不思議に思っていると舞華は金庫の扉を開けて、ある物を取り出した。それは、雄飛がいつの間にか手にしていたのと同じ、水晶のようなものだった。
「まさか祖母ちゃんも……?」
だが、祖母舞華は首を横に振り、話を続ける。
「いいえ、私は受け継いだだけなの。お爺様からね?」
「祖母ちゃんの祖父ちゃんて……えーっともう俺からするとご先祖様なんだけど?」
「そういう認識でも構わないわ。問題なのは……そのお爺様、英雄さんが、貴方が出会った超常的存在から得た力と、正義の妄執の念を後世に残したことなのよ」
舞華の言葉に驚くと同時に、納得してしまう自分がいる事に雄飛は気づいた。兄、仁翔の様子や行動が合致すると何故だか思えたからだ。
「じゃあ祖母ちゃんも、その、英雄さんの妄執に?」
「えぇとても苦しんだわ。けれど、私はお祖父ちゃん、夫がいたから大丈夫だったの。だけれど、懸念はしていたわ」
「懸念?」
「後世に受け継がれた英雄さんの念が、爆発する事よ」
(アイツの事も気づいてるって事か)
「雄飛、貴方に託す事になってしまってごめんなさい。兄弟で……こんな運命だなんて皮肉どころではないわ」
「祖母ちゃん……」
辛そうな祖母の姿を見て、雄飛の胸は痛む。それと同時に、見た事もない英雄に怒りが湧いた。
(何を残してくれてんだよ、クソ爺が! 正義の念を受け継がせる? てめぇ勝手にも程があるだろうが)
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