第4話 始まるは苛烈な正義?
一日検査入院をした後、異常無しと診断された雄飛は退院し、自分の借りているワンルームのマンションに帰って来ていた。
テレビを点けると……衝撃のニュースが目に飛び込んで来た。
『こちらが、犯行声明になります。各局に同じものが送られている模様ですが……再生致します』
映し出されたのは、青い鎧のようなスーツに仮面を着けた人物の映像だった。加工された音声が耳に入って来る。
『僕はこの国に真の正義をもたらす者、正義の執行者である。この国には悪が蔓延るばかりで、正義が失われつつある。故に……この僕が! 真の正義を! 貫いて見せる!! そのために、まずは不正蔓延りしモールを焼いた。青き正義の炎により、執行されたのだ!』
永遠と自分の思想を語る人物を見て、雄飛の全身に冷や汗が伝う。声も姿も変えているが……直感的に誰だか理解してしまった。
「あ、にき……? なに、やってんだよ!!」
気付けば声が口からこぼれていた。昔から正義に対して苛烈な兄ではあったが、こんな事をしでかすなんて信じたくなかった。
それに根拠もない。雄飛の直感がそう言っているだけだ。
杞憂かもしれない。
だが、その希望は悪意なき母からの連絡によって砕かれた。
『雄飛、入院したらしいけれど無事でよかったわ。
母からの連絡が自分に来るのは珍しい。相変わらずの母の態度よりも、その母をないがしろに兄の仁翔がしたという事実が気味悪さを感じさせた。
仁翔は母に守られて育ってきている。だからか、母への信頼は高いはずなのだ。
試しに父にも連絡を入れてみたが、返って来たのは……。
『無事でよかったぞ、雄飛。具合が悪化したり何かあったらすぐに連絡をするように。仁翔の事は、気にしなくていい、ゆっくり休め』
父らしい言葉に少し心が温かくなるが、同時に父も兄と連絡が取れていないのだろうと推測出来た。
(どうしたらいい? 誰にも相談なんてできねぇし……)
それに気づいてしまったのだ。あの火災が兄の手によるものであるなら、仁翔は自分とあの少女、美夢を殺そうとしたという事になる。
(あの時、青い炎は追って来ているようだった。俺達を殺すため? それにあの力が兄さんの物だとしたら……いつ力を?)
疑問が渦巻いて頭から離れない。その時だった。携帯端末が鳴った。着信相手は祖母の舞華からだ。
「もしもし、おばあちゃん? どうしたんだ?」
『雄飛、今周りには誰もいない?』
「いねぇけど?」
『できるだけ急いで、私の家に来て欲しいの……お願い』
「あ、うん。わかった……今から、行くよ」
そうして通話を切ると、雄飛は不思議な感覚がした。舞華は……何かを知っている。
そんな直感がしたからだ――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます