第2話 出会いは突然に

(暇だな……適当に街をぶらつくか……)


 このまま過ごしていると日があっという間に暮れてしまう。流石に、それは嫌だと思った雄飛は座椅子から立ち上がると、適当に着替え始めた。

 ジーンズに黒いシンプルなTシャツを着ると、くるぶしまでの黒い靴下を履いてから白いスニーカを下駄箱から取り出した。

 季節は真夏。

 年々暑くなるこの時期が、昔は好きだった……今は暑すぎて、好まないが。


「エグイくらい、あちぃな……」


 思わず口が悪くなる。だが、悪態を吐いても意味がないので……早くも涼しい所を求めて、とりあえずショッピングモールに向かう事にした。

 少し距離があるが散歩にはちょうどいいだろうと判断した雄飛は、暑さを耐えて歩を進める。

 数十分後。

 少しバテながらショッピングモールに辿り着いた雄飛は、飲み物を求めて中を彷徨う。

 そうして、スポーツドリンクを購入した雄飛はベンチがあるフロアへ向かい、適当に腰掛けてペットボトルのキャップを開けて流し込んだ。

 身体に水分が沁みわたるのを感じながら、一息吐いた時だった。

 隣に顔色が悪そうな、雄飛と同年代……高校生くらいの少女が座って来た。長い黒髪が艶やかで少し小柄な儚げな少女に、一瞬迷って雄飛は声をかけた。


「あの……顔色悪いですけど大丈夫です?」


「へ……? あ、は……い」


 気まずい空気が二人の間に流れる。


(しくったか? 声かけるんじゃなかったな……)


 雄飛がそう思った時だった。少女がジッと見つめた後、振り絞るような声で尋ねて来た。


「あ……の。貴方は……優しい?」


「え? どう、かなぁ……親切ではありたいと、思って葉いるけども」


「そう。ねぇ……」


 少女が話を続けようとしたが、突然の爆音で途切れてしまった。突然の出来事に周囲の人々も驚き、困惑している。


「なんだ……!?」


 雄飛もベンチから立ち上がり、辺りを伺えば黒い煙が見えた。


「火事だ! 逃げろ!!」


 誰かの叫びで、モールにいた人々が外へ逃げるべく一斉に走り出した。雄飛は少女の方へ視線を向けると少女が不安げにこちらを見ていた。


「アンタ、走れるか? というより、動けるか?」


 首を縦に振ると少女は雄飛の左手にそっと右手を添えて来た。少し驚いた雄飛だったが、今はそれどころではない。

 少女の手をしっかりと握ると、二人は走り出す。

 避難通路を走るが、少女はやはり体調が悪いのか動きが遅い。雄飛は彼女を抱きかかえて逃げる事にした。驚く彼女の顔が見えたが、気にしている余裕はなかった。

 だが、ちょうど雄飛達の目前で避難経路の屋根が崩落した。


「はぁ!? ざっけんなよ!? ちっ、別の経路を……!」


 急いで引き返し、別の経路を探す。その時見えた。

 が……。

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