第3話 無畏ノ夢
急いで中に入れば、今にも崩れ落ちそうな天井の下に母娘が抱き合い座り込んでいた。
(いけない! このままでは
瞬時にそう判断した
「……空間固定。
刹那、周囲の時間が止まる。だが、その中において英雄だけが動くことが可能であった。
(なんだこれは……。私……の力?)
不思議と違和感はない。ただ、今は母娘の事が最優先と彼女達を止まった時の中で、抱えて外を連れ出した。
いくら女子供とはいえ、男一人で二十代くらいの母と幼い娘を抱えて素早く動くのは困難だ。通常であれば。
だが、今の英雄にはその重さすら感じることなく。
彼女達を外の安全な場所まで連れて行き、置いて少し離れた物陰で空間固定を解除した。
こちらも不思議と感覚でできてしまった。
途端、一気に崩れる家。周囲の悲鳴が上がる最中、中にいたはずの母娘は狐につままれたような表情で茫然としている。
彼女達の無事を確認してから、英雄はその場を後にした。
――
****
「これは……ふふふ……あはは! 私は目覚めたのか! 力に!」
(この力さえあれば……悪事を暴き、正義を為せる! いや、為してみせるとも!)
その瞳は希望に満ち溢れていた。
****
演説会場に着いた英雄は、人の多さに驚きを隠せなかった。
(な、なぜ!? こんなに支持者が増えているのだ!?)
対立候補の方が支持者の数が圧倒的だ。このままでは、英雄が支持している政治家は間違いなく落選するだろう。
(くっ! 卑怯な! 一体どんな手を使ったのだ!)
歯ぎしりし、悔しさを滲ませる。
(何か手はないのか!?)
その時だった。対立候補が演説している足場に亀裂が入って行くのが見えた。
……考えるより先に、身体が動いていた。
「
英雄はまたあの姿になると、今にも落下せんとする政治家のもとへ猛スピードで辿り着くと、彼をそのまま抱き上げ、安全な場所へ降ろした。
「き、君は……!?」
驚く対立候補の声に答えることなく、英雄は足早にその場から立ち去った。……風のように。
****
再び
「はぁ……なぜ私は? あんなことを……?」
自分でもわからない。だが、何かを掴んだ感覚がした。
――それが例え自惚れであったとしても。
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