第2話 昇華顕現
(うっ……あ? だ、誰……だ?)
熱波による酸素不足と激痛で意識が朦朧とし始めた
【ほう? 死するが恐怖ではないと? 興味深い】
脳内に直接語りかけるのような響き方に、英雄の顔が歪む。だが、声の主は気にすることなく話を続ける。
【汝の想いに我が応えよう】
その言葉に返す余裕もなく、英雄の意識は途切れた。
****
「うぅ……ん?」
目を覚ました英雄の視界に、見慣れた天井が映る。
「ここは……私の部屋……か?」
気付けば英雄は自室の布団の上にいた。それも彼にしては珍しく裸で。
「なにが……どういう? む?」
さすがにこのままではと、羞恥を覚えた英雄が服を着ようと起き上がった時だった。何かが右手に触れた。
「なんだこれは……?」
そこにあったのは見慣れない、手のひらに収まる程度の長方形の水晶のようなものだった。不思議に思いながらそれを手に取ると、
英雄は少し悩んだ素振りをした後、それを手にしてから箪笥を開けて適当に見繕うと着替え時刻を確認するため、懐中時計を取り出した。
「……む? どういう、ことだ……?」
気付けば時刻は午前六時を回っていた。
(朝? 私はいつ帰り、いつ寝たのだ?)
昨晩の記憶が
だが不思議な高揚感に包まれており、記憶を喪失していることに不快さも、不安さすらもなかった。
「さて、今日こそは証拠を掴むとしよう……。悪事を必ず暴いて見せる!」
意気込む英雄はなぜだか鼻歌すら奏でられるほど気分良く、自室を後にした。
****
向かった先は、自身が支持する政治家との対立相手のもとだ。彼の
今日彼は、演説を行う予定のはずだ。
(そこでなんでもいい! 情報さえ得られれば……!)
意気込むものの、演説会場まではまだ時間がかかる。そこで英雄は近道を通ることにした。
だが……。
(む? 妙だな……?)
何かを感じた英雄は、思わず立ち止まる。耳を澄ませ、全神経を集中させ……そして気づいた。
「なにかが崩れる……音か?」
突き動かされるように走り出せば、民家の一軒にひび割れができ始めていた。
(あれでは崩れてしまう! 中に人は……
なぜかそう認識できた英雄の口から自然とこぼれていた。
「
懐にしまっていたあの水晶が光る。空間が歪み、英雄は何かを……いや、
白を基調とした細身の鎧のようなものに、首には赤い布をなびかせ、顔の部分にも鬼武者のような面が着く。
(なんだ? これは……。いや、今は!)
倒壊寸前の民家の中に勢いよく
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