「カクヨム甲子園2023」の作品を読んで:ショートストーリー部門

snowdrop

傾向と対策

■これまでの受賞の傾向


・大賞

 二〇一七年 恋愛✕SF

 二〇一八年 恋愛✕SF

 二〇一九年 SF

 二〇二〇年 恋愛✕ミステリー 

 二〇二一年 恋愛✕SF

 二〇二二年 恋愛✕ホラー


 カクヨムは、恋愛要素のあるSFやホラー作品が選ばれている。


・読売

 二〇一七年 ホラー

 二〇一八年 現代ファンタジー✕SF

 二〇一九年 SF

 二〇二〇年 恋愛

 二〇二一年 現代ドラマ

 二〇二二年 現代ファンタジー


 読売新聞社は、前年度作品とジャンルが被らないように選んでいる。 


・協賛

 二〇一八年 恋愛

 二〇一九年 恋愛✕ファンタジー 

 二〇二一年 現代ドラマ

 二〇二二年 現代ドラマ


 二〇一七年と二〇二〇年は協賛企業はなかった。

 毎年変わるが、高校生らしい青春を感じさせるものが選ばれている。

 


■文字数を守ろう


 ショートストーリー部門の応募規定文字数は、『四〇〇文字以上、四〇〇〇文字以下の作品』。


 あれやこれや詰め込みすぎず、描きたいことを一つに決めて書かれるといいと思います。


 四百字詰め原稿用紙換算枚数は、一枚から十枚までです。

 壮大な長編物語を描くには不向きです。ある日の出来事やちょっとした思いつきなどが書ける文量です。




■誤字脱字や文章の書き方には寛大である


 三点リーダーやダッシュの引き方、「 」の使い方、文章頭のひとマス明けなどなどが、文章の書き方としては正しくないからといって、読まれないことはありません。

 書きたいもの、伝えたいもの、作者の書きたい熱量のこもった、読んで深く味わえる作品ならば、多少のことは目をつぶってくれます。


 参加者の高校生の多くがスマホで書いて投稿しているため、文書の書き方を守った入力は手間に感じるからだと思います。


 正しい文章の書き方ができたほうが読みやすいです。が、大事なのは作者が作品に込めた熱量です。多少の間違いを恐れる必要はありません。

 でも、誤字脱字はしないように。

 伝えたいことも伝わりにくくなります。

 書き終えたら、声に出して読み直し、確認しましょう。



■人をむやみに殺さない


 べつに登場人物が死ぬ作品があってもいいです。

 ただ、「感動させるにはキャラを殺せばいい」と安直に考えて書くのは止めたほうが良いと思います。


 物語の山を作るため、安直に殺されるキャラクターにとっては実にいい迷惑な話。読者を感動させるためだけに殺されるのだから。


 これまでカクヨム甲子園に応募されてきた作品にも、恋人や幼馴染や友達、主人公自身が死ぬ作品が多く書かれてきました。

 主人公やその人物に読者を感情移入させ、印象的な死ぬ場面を描いて感動させるのは一つの方法ですが、誰もが思いつく方法です。


 描きたい物語にどうしても必要ならば構いませんが、他の人が思いつかないような展開を考えてみてください。


 読後感が悪いものはやめましょう。

 死を描きやすいジャンルは、ホラーやSF、悲恋ものでも描けるでしょう。


 

■高校生にしか書けないものを書く


 カクヨム甲子園は高校生しか応募できません。

 今を生きている高校生の生の声、生の体験、いましかもっていない感受性でしか書けないものを書くのが良い気がします。


 過去回想で高校生活を描くのは悪くはないですけれども、今現在を生きていると感じられる作品を書いたほうが良いと考えます。


 なぜなら、素晴らしい文章で書かれた、今を描いた作品と回想を主とした作品が最終選考に残ったとき、今をより良く描いていると感じられるのはどちらの作品なのか。

 比較されて選ばれるのは、現役高校生だからこそ書ける作品のほうだからです。


 

■異世界転生ものは選ばれていない


 これまでは、というだけです。

 賞が取れないわけではないと考えます。

 異世界ものでも内容次第だと思います。

 ただ面白いだけではなく、異世界ものに何かを混ぜるのも一つの方法かもしれません。

 ファンタジーは受賞されています。が、未だに異世界転生ものが受賞されている覚えがないです。

 すでにある作品よりも、新しい作品を選んで書いたほうが良いです。

 小説は新規性、つねに新しいものが求められていますから。



■ホラーやSFも選ばれている


 選考側に、ホラーやSFが好きな人がいると推測されます。


 現代ドラマでホラーを描くとか、ファンタジーホラー、あるいはSFで恋愛など、かけ合わせて書かれた作品が、これまで選考に残られています。


 ミステリーを書ける人はホラーも書けます。

 恐いミステリーは、ホラーになります。

 ミステリーに科学的要素を盛り込めばSFにもなります。

 ありふれた視点をちょっとずらすために別の要素を取り入れると、他作品との差別化もでき、オリジナリティを増すこともできると考えます。


 応募する時、大勢の人が書くジャンルを選ぶより、選ぶ人が少ないジャンルの方が、選ばれやすくなる可能性があると考えます。

 ただし、選ぶ側が求め、なおかつ尖った作品である必要があります。



■作品は鮮度が命


 過去ものや回想、昔話がいけないのではありません。

 でも読み手は、フレッシュさを感じたいと思います。

 どんな賞でも、常に新しいものが求められています。

 小説は「〇〇だった」「〇〇でした」と書きます。どんな作品も過去のものです。しかも毎年、新しい作品が次から次へと生まれてくるのです。

 作者自身が感じる、今を意識してみてはいかがでしょうか。


 昨年、ショートとロングストーリー合わせた応募総数2047七作品のうち、中間選考に残ったのは127作品。

 一次選考で、94パーセントが落とされたわけです。


 残った6パーセントから最終選考作品にエントリーされたのは40作品。

 全体の2パーセントに絞られました。


 大賞から奨励賞まで、受賞できたのは十七作品。

 全体の0.8パーセントです。


 受賞作に選ばれるには、他作品と比較されることを意識してください。


 二十歳の自分、十年後の自分でもいいです。

 たった一人でいいので、自分の作品を届けたい誰かを思い浮かべて書いてみてください。


 その作品は読みやすいですか。

 その書き方で伝わりますか。

 読んだ相手に、どんな気持ちになってもらいたいですか。

 書き終わったら、編集の目を持って推敲してください。

 書きたものを読み直して文章を練り直すのは、過去の自分との対話です。

 文章を読んで絵が思い浮かびますか。

 少なくとも二回は読んでみてください。

 第三者に読んでもらって感想をもらってみましょう。

 身近な人がはずかしいのなら、数日おいてから読み直してみてください。



■各賞についての傾向


 大賞は、ジャンルを問わず、恋愛要素のあるアイデアやオリジナリティのある尖った作品が選ばれる傾向があると考えます。


 尖ったとはなにかといえば、他作品と比べて抜きん出たものです。

 同じ題材を描きながら、誰もが思いつくような視点とは異なる見方で描き、「この書き方があったか」と思える作品かしらん。


 読売新聞社賞は、文学的で読みやすい作品でしょう。


 協賛企業の賞ではテーマが与えられますが、今を生きる高校生を描いた現代作品が多いと思います。

 今年の協賛は、テックウインド株式会社。

 AKRacing賞のテーマは「集中力」。

 賞状・盾+AKRacing Overture ゲーミングチェアがもらえるという。

 AKRacingゲーミングチェアは、究極のゲーム競技用チェアを追求して生まれた製品。画面に向き合って執筆を続ける際の身体への負担をやわらげてくれると説明されてます。   

 また、テックウインド株式会社から、「学業はもちろん、クリエイティブな作業に取り組むときや、部活動での大会・コンクールなど、本当の意味で集中できたときには自分でも思いがけないようなパフォーマンスを発揮でき、新しい自分を発見することができた、そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。『集中力』をテーマに、みなさんの瑞々しい感性で、ひたむきに打ち込むことの大切さを物語に描き出してくれることを期待しています」とあります。


 高校生にしか感じられないみずみずしい感性で、集中力というお題から、作者であるあなたが、どういうときにひたむきに打ち込むことが大切に感じるのか、思い巡らせて物語を描いてみてください。

 ゲーミングチェアを登場させてもいいし、eスポーツを題材にするのもいいでしょう。

 でも、同じことを他の人も考えるはず。

 かならずしも、ゲーミングチェアを登場させる必要はないでしょうし、ゲームする場面を描かなくてもいい。

 自分ならどんなときに、ひたむきに集中して打ち込むのか。

 考えて、作品を書いてください。



 各賞を選ぶ際に選考側は、現代ドラマやSF、ホラーやミステリー、ファンタジー作品など、ジャンルがかぶらないようされていると思います。


 たとえば、二〇二二年のショートドラマ部門は、三章とも現代ドラマです。

 けれども大賞は、ホラー要素のある恋愛もの。

 読売新聞社賞は、ファンタジー要素。

 ポカリスェット賞は青春ものでした。


 ロングストーリー部門も、三賞とも現代ドラマでした。

 大賞は恋愛もの。

 読売新聞社賞は家族愛かしらん。

 ポカリスェット賞は青春もの。


 ただし、今年も同じように各賞とも現代ドラマをベースにした作品が選ばれるかどうかはわかりません。

 むしろ、昨年受賞したものと同じような作品は選ばれないと思われます。


 二年連続して似たような作品は、選ぶ側としても敬遠すると考えるからです。

 世にある他の賞でも、同様なことはいえます。

 できるなら隔年を置くことを勧めます。


 大賞を目指される方は、ジャンルは昨年とかぶらないものを選びつつ、広義の恋愛要素のある作品を考えてはいかがでしょうか。


 ご参考までに。

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