僕の物語を君に。君の物語と共に。

僕の物語を君に。君の物語と共に。

作者 ぐらにゅー島

https://kakuyomu.jp/works/16817330649298997893


 小説家を夢見てきた僕は、彼女にプロポーズしたい気持ちを小説にして応募するも落選。彼女と自作の聖地巡礼をし、二人の人生を一緒に創っていこうとプロポーズされる話。

 

 現代ドラマ。

 きっと、小説よりも価値ある創作が生まれた瞬間の作品。

 人生はドラマ以上にドラマチックなことを気づかせてくれる。


 主人公は、大人の男性。一人称、僕で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。


 女性神話の中心軌道と絡め取り話法で書かれている。

 主人公は高校生の時から小説を書き始め、今に至るまで、小説家になれると信じて頑張ってきた。

 付き合っている彼女に気持ちを口に出して伝えることが苦手だったので、小説にすれば誰かが気づいてくれると思い、武蔵野を舞台にしてラストは公園で告白して結ばれる小説を書き、彼女にも見せ、過去最高傑作といえる作品をコンテストに出した。

 サイトで公表された予選通過者を確認するも、名前がなかった。

 彼女から連絡が入り、ダメだったと報告。「小説家になるのは、諦めるよ。今までありがとう」と送ると、頑張ったねのあと、「一緒に、武蔵野に行こう」と誘われる。

 駅につき、公園に来たいなと言われて連れて行く。「なんかこれって、聖地巡礼じゃない?」といわれて、なんの作品か思い出せズン尋ねると、「君の小説に決まってるじゃん」自分の小説の聖地巡礼にくるなんて痛すぎないか聞くと、「えー。いいんじゃない?」と笑う彼女。「君の小説はプロの小説だと思ってるし!」といわれると恥ずかしくなる。

 公園にたどり着き、「ラストのシーン、感動したなぁ。ここで、主人公が告白するとこ」クルクル回る彼女。夢を諦めたらから大多数を感動させられないけれど「私を感動させられたんだから!」

 彼女の言葉が胸に響き、作品と同じことをするのも聖地巡礼のセオリーじゃないかといって、プロポーズするも断られ、「私と、結婚してくれない?」「全部君のシナリオ通りなんて、なんか幸せにして貰ってるみたいで悔しいから。だから、私と君で創っていこうよ」主人公の手を取り立ち上がる。「君の小説だったら、ここで話は終わりだったよね?だから、ここからいくらでも自由にできるんだよ。無限に、可能性があるんだよ!」

 視界が明るくなり、「君のこと、絶対に僕が幸せにするよ」彼女の手を握る。「だから、二人で幸せになるんだって」

 きっと小説はもう書かないけれど、二人だけの物語を作っていくんだと手を繋いで歩き出すのだった。


 小説の謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が絡まり合いなあら展開され、二人はどんな物語をこれから紡いでいくのか応援したくなる。

 面白い作品にある、どきり、びっくり、うらぎりの三つの「り」が書かれている。

 カクヨム甲子園に参加している高校生のみならず、カクヨムを利用している多くの人たちが、本作の主人公のような夢を、大なり小なりかかえている。実際に夢が叶う人はほんの一握り。大半の人は、大多数の人たちを感動させられず、夢半ばで筆を折るか、表舞台から退場することになる。

 本作の主人公も、過去最高傑作と自負すうr作品を応募したにも関わらず、予選通過できずに小説家の夢を諦める。

 第一次選考は、応募された作品の九割を落とすもの。

 最低限、商業的に小説の形になっているものが通過する。以前は、誤字脱字が多かったり、読みづらかったりしたものも落としていたが、ラノベやカクヨムなどの小説投稿サイトからの応募の場合はその限りではなく、文章の書き方を大目に見て、お話として面白い作品を通過するようになってきている。もちろん、文字数が規定内に収まっていなかったり、児童文学にエロ作品を送るみたいなカテゴリーエラーなものは落とされる。

 そう考えると主人公の作品は、応募先が求めている内容のものではない作品だったか、面白くなかったか、あるいは文字数がオーバーしていたか。それとも、読者が想像や共感できなかったり、感動できない出来だったのかしらん。


「好きな人にラブレターを出すかのように心臓をドキドキさせて、画面をスクロールする」この表現が良い。

 小説の応募でなくともいい。何かしらの公募、受験など何かに応募し、結果が発表されるのを待ったことがある人は主人公の気持ちに共感できるに違いない。

 画面をスクロールさせて見直すのも経験がある人には、胸を打つだろう。


 彼女は、高校からの付き合いなのがわかる。

 今回の作品を彼女に読んでもらっているところから考えると、、昔から書いた作品を読んでもらっていたのではと想像する。


「一次審査に通るくらいの自信があったのだ。だって、あんなに血反吐を吐いて魂を込めたのだから……」

 小説でなくとも、漫画や他のものでもおなじ。

 一生懸命やったから、それにみあった結果が出ると自身の体験から思ってしまうけれども、それは間違い。

 受験やテスト勉強も、小説も漫画も、一生懸命魂込めればいいわけではない。

 頑張れば自分の中でやった感、達成感が生まれ、自信につながるし、それで良い結果が出ることもある。歩けなかった赤ん坊が、頑張って歩けるようになるとか、二重跳びが飛べるようになるとか。

 創作に関しては、頑張れば必ず見合った結果がでるわけではないことは覚えておくと、落選してもショックが小さくすむかもしれない。


「私、小説の良し悪しなんてわかんないからさ。君の小説はプロの小説だと思ってるし!」

 いい彼女さんだと思う。

 小説を書いたことのない人から見たら、書ける人はそれだけで凄い。小説に限らず、ピアノやバイオリン、水彩画、スケートを始めとするスポーツなど。

 できない人からすれば、できる人は凄いのだ。

 たとえプロでなくとも、アマであっても。 


 公園が綺麗らしいけど、どうきれいなのかわからない。

「初めてここに来た時は、あんなに美しく、何処を切り取っても絵になるような景色に見えた。でも、今未来が潰えた時、その美しさは過去のものと成り果てたのだ」とあり、綺麗さを感じる主人公の心の変化は、過去と現在の見え方の比較で伝わりはする。

 でも、主人公の小説を、私達読者は読んでいないので、わからない。「あんなに美しく」ではなく、なにか具体的に綺麗だと思えたものを書いてあると、読み手は想像できたと思う。


「自分でそう思うのと、誰かにそう口に出して言われるのとでは同じ言葉でも重みが違う」

 自分で思うのと誰かにいわれるのとでは、同じ言葉でも重みが違う、ということかしらん。


 聖地巡礼で同じことをする主人公。

 小説の中でも、プロポーズをしていたのだろう。

 これに対して、彼女が断る理由が良かった。

 ここでOKしたら、小説のとおりになってしまう。彼の思い描いたとおりに自分が生きることであり、彼に守ってもらい、幸せにしてもらう受け身な生き方だ。

 結婚は二人のものであり、一緒に作っていくもの。

 こういう考えができるのが、男よりも女だと思う。

 キャラクターに現実味を感じられるので、こういう人たちが、同じ空の下にいるのではと思わせてくれるところが良い。


 読後、タイトルはそういう意味だったのかと腑に落ちる。

 ラスト、「僕だけで奏でるストーリーなんて最高につまらない」とある。結婚したら、その生活を小説にしてみるとか、あるいは彼女に小説のアイデア出しを手伝ってもらうのはどうだろう。

 二人で作れば、最終選考までたどり着く日がくるかもしれない。

 二人の人生に、幸多くあらんことを願う。

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