お地蔵さんのお供物
お地蔵さんのお供物
作者 結城綾
https://kakuyomu.jp/works/16817330656393372343
学校帰り、いつも見かけるお地蔵さんにみかんを備えて一緒に食べながら降りだした雪を眺めて「綺麗だねお地蔵さん!」と声をかけた話。
疑問符感嘆符のあとはひとマスあける等気にしない。
心温まる素敵なお話。
子供らしさがよく書けている。
三人称、小学生の女の子、すずちゃん視点で書かれた文体。ですます調で綴られている。
読点がなく、一文が長いところがある。
それぞれの人物の想いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。
冬。放課後、仲のいい友達と遊んだ帰り道、主人公の少女は一人で帰宅していた。
途中、いつも見かけるお地蔵さんに独り言をかけ、ランドセルに入っていた友達からのおすそ分けのみかんを取り出し、剥いてはお供えし、自分も一緒に食べるのは、お地蔵さんに声をかけてもらうため。
すると、滅多に振らない雪が降り出す。「うわぁ〜! 綺麗だねお地蔵さん! お地蔵さんもそう思うでしょう!」何も語らないが背中では語っていそうなお地蔵さんと手を振って別れるとき、笑ったように見えた。
帰宅後、母親に「早く手を洗って宿題しなさい!」と怒られながらこたつに入ると、暖かさに包まれてふやけてしまいそうになる。今日の冒険を思い出しては笑みを浮かべ、ランドセルからみかんを取り出す。皮の中に詰まっている光と雪国が透けているように見えてまた笑うのだった。
ですます調の書き方のせいか、御伽噺のような雰囲気を醸し出している。
子供らしさはよく書けている。
子供にとっては、大人から見たらちょっとしたことでも、大冒険なのだ。
「アルベドの筋に似た細雪」の表現に迷う。
小学生の低学年の彼女が、みかんのアルベドを知っているかどうか。
知っている子もいるとは思うけど、いいのかしらん。
少女のはめている軍手、手袋が気になった。
「五本指が白になって他が黒色の軍手を装備させられていました」
装備なんて仰々しい気がする。
ふつうにはめているだけでは駄目なのかしらん。
雪が滅多にふらない地域とあるので、軍手をはめなければならないような必要性を感じない。
それとも、滅多に降らない地域だからこそ、寒さに慣れていないため、大げさとも思える完全装備の防寒着着用が必要だったのか。
子供が課せを惹かないようにと心配した親が持たせたはずなので、後者かもしれない。
だったら、装備でもいいかもしれない。
「五本指が白になって他が黒色」というのは、指の部分が白色で、手のひらや甲の部分は黒、ということかしらん。
みかんを取り出して軍手をしていたから、剥くことができなかったのはわかる。でもその前に、「子供ながらの解決策を必死に思いついては地面を指でなぞっていく。雑草の下は土で固められているため、小柄な指を沈ませて付着する。泥臭い匂いのある指を鼻に近づけ嗅ぐ」とあり、このときは軍手ははめているはず。
指先を鼻に持っていっているのなら、自分が軍手しているとわかったはず。そのあとで、はめていることに気づかなかったのは、モヤモヤする。
それだけ、主人公のすずちゃんは幼かったのかもしれない。
きっと小学一年生なのだろう。
お地蔵さまのまわりの、「周辺には雑草が生い茂っていて古く咲いて緑に囲まれています」がモヤモヤする。
誤字かしらん。とおにかく、雑草に囲まれているにちがいない。
「少女は記憶をフラッシュバックさせてランドセルの中身を必死に漁ります」とある。フラッシュバックは強いトラウマ体験を受けた場合、後になってその記憶が突然、非常に鮮明に思い出されたり、夢に見たりする現象を指すので、こういう使い方ではないと思う。
お地蔵さんにお供えして、一緒にみかんを食べたことで、お地蔵さんはお礼に雪を降らせ、一緒に「綺麗だねお地蔵さん!」素敵な景色を眺めることをしたことで、言葉は通じなくても、互いに気持ちが通じ合えたのだろう。
「喜びを分かち合っていましたが、軍手を外していたからか体が冷えて鼻水を垂らして顔を汚してしまいました」少女の鼻水を垂らしているところが、現実味があって、お地蔵さんとのちょっとした奇跡が本当に思えてくる。
こういうところが良い。
だから「大きく手を振りながら走り去る少女を横目に、石でできているはずの顔がにっこりと笑ったのは気のせいでしょうか」と書かれていても、読み手は「気のせいじゃない」と思える。
帰宅したときの、「母親特有の怒りと愛くるしさを混ぜた表情になれたのか」というところから、すずちゃんの日常が垣間見えるので、非日常から日常へと帰還してきたのがわかる。
「ふと目に入るだいだい色」とは、こたつ布団の中に潜り込んで、電熱器の温かい明るさを見たのだ。そこから黄昏色に染まったあたたかくも肌寒い時間帯、みかんを連想し、お地蔵さんとの出来事を思い出したのだろう。
彼女が思い出す光景が、浮かんでくるようだ。
「ランドセルの中にあるみかんを取り出す」から、いったい幾つ、みかんをもらったのだろうかと考えてしまう。
ランドセルには教科書やノートも入っているはずなのに。
「皮の中に詰まっている光と雪国が透けているように見えて」の比喩が難しい。皮の中に詰まっている光とは、皮剥いた中のみかんのことかしらん。
みかんから、こたつの電熱器を連想し、その暖かさによって「雪国が透けているように」、寒さに冷えていた体がぬくもりにとけてふやけてしまった自分自身を思い出して、笑ったのだろうか。
簡単に考えれば、みかんを見ても、お地蔵さんと通じあえたことを思い出して笑みが溢れてきたのかもしれない。
黄昏色に染まったあたたかくも肌寒い時間帯という、寒い状況で、なおかつ一人で帰宅しているという寂しい状況からはじまり、おじさんとお地蔵さんとのささやかな交流を経て、暖かいこたつに入りながら素敵な冒険だったと思い返して笑う展開は、読んでいても心があたたまる。
読み終えて、言葉だけが声をかける手段ではないことに気づかせてくれた作品だと感じ入った。お地蔵様には見かけたら手を合わせているけれども、すずちゃんを見習わなければと思った。
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