ぼくの片思い

ぼくの片思い

作者 醍醐潤

https://kakuyomu.jp/works/16816452218828642252


 南彩音に一目惚れした僕は告白するも振られたが、彼女が振り返るまで気持ちを伝え続けようとする話。


 若さと無謀は紙一重。

 しつこいと、余計に嫌われてしまいそう。


 主人公は男子高校二年生。一人称、ぼくで書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。

 女性神話、もしくはそれぞれの人物の思いを知りながら結ばれない状況にもどかしさを感じることで共感するタイプの中心軌道に沿って書かれている。

 月曜日の放課後の教室で、南彩音と二人きりになったとき「好きです。付き合ってください」と告白したのは、彼女が優しくておっとりしている性格が良くて、一目惚れをしたから。

 沈黙の後、彼女は「ごめんなさい」と告げる。

 四日後の金曜日の昼休み、友人の壮介に綾音に告白したことをしられる。図書館に場所を移し、振られたことを告げると、彼もが旧委員の伊坂陽菜に告白して振られたことがあると告げられる。友達としてならと言われたが、裏ではボロクソに愚痴られていたことを知ってショックを受けた話をする。

 綾音は悪口いわなそうで良かったなと慰められる。

 十七年間を振り返り、嫌われないように生きてきたのに振られたのはなぜかを考えると、好みではなかったのではと思い至り、絶望する。それでも彼女が好きな気持ちは変わらず、彼女が振り返るまで何度でも思いを伝えるんだと駆け出すのだった。


 書き出しの、どうして振られたのかを振り返っていくところは良い。読み手も興味をそそられる。


 南彩音を一目惚れして好きになる割には、彼女の人物描写が乏しい。彼女については、主人公と同じクラスで、「出席番号は二十五番」「誕生日は一月二十三日」「優しくておっとりしている性格が良い」それくらい。あとは、大人しそうだとか、悪口をいわなさそうとか、熱心に授業を受けているとか、彼氏はいなさそうくらい。

「彩音を見て唐突にドキドキしたから、彼女に恋をしたと気づいたとある。

 もう少し具体的に、どこをどう一目惚れしたのかがわかるといいかもしれない。きっと可愛い顔をしていたのでしょう。

 ただ、読んだ印象としては、なんとなく大人しそうな子だから告白したら付き合えるのではと安易に考えて行動し、あっさり振られてしまった感がある。


 友達の壮介のように、「振られても友達でもいいから」と食い下がればよかったのに。振られた理由も、そのときに聞けばよかったのに、あっさり引き下がってしまっている。


 主人公は女友達がいなさそうなので、まず女友達を作るところからはじめるといい。すると、女の子の接し方、話し方も徐々にわかってくるはず。

 いきなり告白するのではなく、まず仲良くなるところから始める。

 そのためにも、女の子の教えたがり願望を刺激して、授業でわからない問題を彼女に教えてもらうところから関係性を作ればいいと考える。

 また、女子と知り合いになるにはモテる男友達を増やすことも大事だ。モテたいのなら、もてない男子とつるむのをやめた方がいい。


 コンプレックスがあるのなら、さっさと捨てたほうがいい。

 欠点があるなら、自らしゃべってしまう。

 とにかく戦略を建て直さないと、闇雲に彼女に気持ちだけを伝え続けるなら、しつこくつきまとうストーカー呼ばわりされて、ますます嫌われるだろう。

 だからまずは、謝る。

 突然告白して驚かせ、困らせたことを。つぎに、素直に包み隠さず話す。あまりにキミが好きすぎて我慢できず、告白してしまったことを。キミを前にすると、心臓が破裂しそうなくらい、今も恥ずかしいこと。

 すごく内気で、声が上ずっているのもわかるでしょと、自分を包み隠さず彼女に話し、振られた理由を教えてもらう。

 せめて友達になりたいと伝えること。

 それでダメなら、潔く諦めた方がいい。

 でも、きちんと告白して振られたことで、いい恋したと思えて、次に行けるだろう。


 勇気を持って行動しないと、「彩音は、ぼくのことが好みじゃない」と絶望するあまり、ラストの展開のように、こじらせて執拗につきまといかねない。

 そもそも、告白にはドラマが必要だ。

 上手くいかなかったのは、ドラマがなかったから。

 小説も、「あっ」と思わせる新奇性が求められるように、告白にも必要なのだ。

 主人公の彼には、自分のことよりも彼女のために、がんばってもらいたいものである。

 

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