カップラーメン

カップラーメン

作者 朝凪千代

https://kakuyomu.jp/works/16817330663312405261


 深夜、グミと朝食の明太子おにぎりを買いに立ち寄ったコンビニでカップラーメンを購入してしまい、チーズを入れてラーメンを食べた後、おにぎりを残りスープに入れておいしく頂いてしまった話。

 

 読み終えて、思わず笑ってしまった。

 告解のような作品。

 実体験か、近親者からの体験談を元にしたのかと思える出来。


 主人公、会社員。一人称、私で書かれた文体。自分語りの実況中継で綴られている。ですます調で書かれている。


 女性神話の中心軌道に沿って書かれている。

 翌日は飛行機を乗り継いで実家に帰る予定の主人公は深夜、睡魔と戦いながら会社から自宅への帰り道。次の日の朝食のおにぎりとん発売のグミを購入したとき、ついカップラーメンも買って帰宅。気付くとお湯を沸かしていた。

 湯を注いでいると、チーズを入れたら美味しくなるのではと思いついて実行、最後まで美味しくいただき時刻は深夜一時を迎える頃。残ったスープをどうしたものかと思っていると、おにぎりを入れたらと思いつく。健康を気にしなくてはと思いながら、明日は実家に帰るためにカロリーを使うからと、おにぎりをスープに入れ、おいしく頂いてしまうのだった。


 主人公の罪の謎と、主人公に起こる様々な出来事の謎が絡まり合いながら展開していく流れが面白い。

 書き出しから興味を惹かれる。

 誰に許しを乞うているのかわからないが、「わたくしが全て悪いのですから――」と自身に責を負おうとしている。尋常ならざることでも置きたのかと、読み手を読み進まさせる書き方が実にいい。


 日付が変わろうとしたときとあるので、深夜零時に、帰宅途中のコンビニへと入ってしまった。

「深夜というのは恐ろしいもので、人間は知らずのうちにコンビニに吸い込まれるのです」の書き方が面白い。

 深夜のコンビニ、吸い込まれるように入った経験がないので、わからないのだけれども、そういうこともあるのかもしれない。


「次の日の朝ごはんと、新発売のグミを手にとり、レジに向かおうとしました」とあるので、朝ごはんは買わないといけない、という気持ちがあったから、入ってしまったのだと考える。

 新発売のグミは、興味が引かれたのだろう。


「何の変哲もないカップラーメン。どこにでもあるカップラーメン。おいしいよな、と思った時にはもう家におりました。手にカップラーメンを持って」

 もはや常習的に行動しているのだろう。

 普段からカップラーメンを買っては食べていて、そのときの動作のまま、考えることもなく無意識に行動してしまったのだろう。

 もちろん、お金は払って。

 

 購入まではわかるけれども、「私は、私は……。お湯を沸かしてしまいました……」と食べる行動までしている。

 きっと、机の上に食べ物があれば手を伸ばして食べてしまうほど、動物的反射行動で、湯を沸かしてはカップラーメンを何百何千回と食べてきているに違いない。


 湯を沸かしても、注がなければいいのに、湯を注いでしまう。

 カップラーメンを購入したら湯を沸かし、沸いたら注ぐのが当たり前になるくらい、反復された行動で、体に染み付いてしまっているのだ。


「そこでひらめいてしまったのです。チーズを入れたら美味しいのでは」と考え、実行してしまう。

 本作の主人公だけでなく、最近の韓国ブームの影響からか、いろいろなものにチーズをかけて食べるようになった風潮がある。

 たしかに、チーズに含まれるカルシウムは魅力的だけれども、カロリーや塩分、脂質や糖質を考えると、カップラーメンにチーズを加えて深夜食べるのは非常によろしくない。

 

「塩味のきいた麺と濃厚なチーズのコクが舞踏会を開くがごとく、口の中で踊っておりました。飽きてしまうのでは、という心配も無用でした。舌に残るスープとチーズの香りが麻薬のように次をねだるのです。(麻薬に手を出したことはございませんが)」

 この比喩表現は面白い。

 体が、次を欲しているのがよく伝わってくる。

 

 食べ終わった後、「少し残ったスープと遊んでおりました。このスープというのは中々厄介で、そのまま流して良いものかいつも私を悩ませます」が現実味がある。

 スープの油分を考えると、そのままシンクに捨てるわけにはいかない。キッチンペーパーに油分を吸わせて捨てることをしたい。

 飲み干せば油分と塩分を摂取することになり、体によろしくない。

 こともあろうに主人公は「おにぎりを入れたら」と思いついてしまう。


「炭水化物&炭水化物になってしまう。そろそろ健康も気をつけなければならない……」と気にしているにも関わらず、「明日は実家に帰る日」で「移動だけで労力を使う」からと、食べてもいい理由を作ってスープにおにぎりを入れてしまうのだ。

「大変美味でございました――」と感想を述べる気持ちはわかる。

 炭水化物は美味しいのは理解できる。

 とってもわかるのだけれども、ラーメンとおにぎりの組み合わせは、炭水化物✕炭水化物。

 ラーメンに餃子やチャーハン、肉まんに飲茶を組み合わせて食べる日本人を見て、中国人が驚いた話を思い出す。

 ただでさえ私達日本人は、ご飯と一緒にお好み焼きやうどんを食べたり、パンに焼きそばを挟んだり、スープパスタと一緒にパンを漬け手は食べるなど、炭水化物をおかずに炭水化物を食べる食生活をしてしまう。

 糖質の取り過ぎである。

 しかも、ご飯や麺類だけではない。

 美味しいからと、パンケーキに大量の生クリームと糖度の高いフルーツをトッピングしたものや、半斤のパンにアイスクリームをのせたハニートーストアイスのせなど、数々のスイーツを好んで食べるのも問題があると言わざる得ない。

 糖質をとりすぎれば中性脂肪の数値が、肉の脂肪や乳脂肪をとりすぎればLDLコレステロール値が高くなる。

 動脈硬化の懸念もでてくる、食生活を見直した方がいい。


 本作冒頭で主人公が、「わたくしの罪をどうかお許しください。……いえ、許されなくても結構です。わたくしが全て悪いのですから――」と懺悔しているけれども、不摂生な食生活は、自分の身に現れるのであって、誰かに許しを乞うものではない。

 ないのだけれども、自制心の弱い人はつい魔が差しては食べ、「ごめんなさい」と周りに謝りながら、また食べてしまうをくり返してしまうのだろう。

 その辺が、現実味があって面白く描けていてよかった。

 

 本作がつい食べすぎてしまうのは、深夜まで仕事をしていることによるストレスが原因と考える。

 ストレスを溜め込まなくても生活できる世であれば、本作の主人公も、深夜遅くにコンビニで買ったカップラーメンにチーズをトッピングし、明太子おにぎりを浸して食べるなんてことはしなかっただろう。

 健康診断の検査結果が大変なことにならないことを願う。

 

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