第26話 土曜日の業務は。
「ひぎぃ」
朝御飯はトースト一枚で済ませ、会社へとはせ参じた僕は締め切りに追われていた。
先日、退職した子の社会保険証は退職日から五日以内に提出、住民税は月内に申請書を提出、ハロワはなるべく早く(すぐ出せの意)で有る。
今日が、退職した子の有給を含めた最終日となるので、書類を片付けていく。
一部、オンライン化したとはいえ、打ち込む個人情報の多さに面倒なのは変わりない。
それでも午前中には終わらせることが出来たのは幸いとも言える。
後は販管費の支払いと、それに対するチェックが今日の大きなお仕事で、時間通りに帰れるかなぁっと、余裕を持ち始める。
「終わりっと。
次……」
「相変わらず早いねぇ、私なんざ支払いの請求書が来なくて……ああもう、建築部はなにしとんじゃい、ゴラァ」
前のおばちゃんが着れるので、抑えて頂く。
「どうどう。
六月にさしかかりますからね、住民税の変更、社会保険の基礎算定、労働保険の算定計算……あぁ、メンドクサイ」
これらは、労務経理としての単発である。
他にも総務としての単発があるので、そればかりをしても居られないのだ。
だからこそ、五月のうちに終わらせられるモノは終わらせてしまいたいというのが本音のところだ。
「会計ソフトを開けてっと」
おばちゃん曰く、全部、銀行の数値が出ないと打てないとのことだが、そんなことはない。
出て無いのは予測で出来るし、もう月も下旬だ、ほぼほぼ数値が固まり始めているので今の内に打った方が早く税理士に連携できる。
怖いのは未収入金や未出金の処理とかだが、それは六月月初にやれば問題ない。
月末の支払いは会計ソフトに数値や科目、摘要を入れながら、ネットバンクで予約してしまえば終了だ。
なお、おばちゃんはお金を出し入れした後じゃないと勘定科目をいれられない(曰く物件ごとの単価が云々といって予測で打てないらしい)のでそこでタイムロスする訳だけどね……出来ないんじゃしかたない。
「あ、退職した奴が残した、売決済、お前が行け」
「は?
……あ、いえ、承りました」
素が出てしまい、社長が不機嫌そうな顔をするので、言いなおす。
「火曜日の午前中か」
とはいえ、物件を引き渡すだけならまだ簡単である。
契約は既に終わっており、銀行で書面の受け渡しを行い、
ちなみに
前の先のおばちゃんから権利証やら固定資産税評価証明書やら印鑑証明書やら、実印の押された司法書士への委任状やらを受け取り、
「伝票は月曜日に渡すね」
っと、連携される。
逆に考えれば外に出るいい機会ではあるので、気晴らしとしてはいいかもしれないとポジティブに考えることにするが、月末作業が近づいていることに気付き、少し気を抜きすぎだと、作業の速度を上げていく。
これをすればミスは増えるが、終わり速度が速くなり、全体的に終わっていない仕事が減る。それにミスと言っても四捨五入する小さな数値の報告だったり、誤字脱字にしか過ぎないので、特に問題とあげつらう事でも無い。
それこそ財務作業だったり、確定申告の作業なら細心の注意をもってやる。
だが、今求められているのはそれではない。
それに早く帰って、真弓さんと真矢ちゃんに会いたいのだ。
仕方ないね?
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