第22話 金曜日のお仕事は。
「さてさて」
スケジュールがヤバいと感じながら、黙々と処理していく僕。
特に朝は問題も無く進んだおかげで、これまでの遅れの大体を取り戻すことが出来た。
しかし、月も半ばだ。
給与の振込手続きは終わってるが、忙しい時期に差し掛かってくる。
何故ならば、販管費の支払いだとか、通常の家賃の入金日に差し掛かってくるからだ。
特に家賃の入金は重要だ。
正直に言えば、不動産賃貸に置いて二か月の滞納何てよくあるのだ。
電話がつながる人はまだいい。
「あぁ、この人、また繋がらない!」
電話すら繋がらない人は赤いレターパックで催促し、それでもダメなら郵送証明をつけて督促状だ。人によっては家賃保証会社が保証する期間が定まっており、追い込みを掛けなければいけないこともよくある。
「会計ソフトも修正しとこ……」
あと、利益の部分にかかるので経理ソフトの勘定科目が問題となる。
売り上げにはなるのだが、未収入金という扱いにしなければならないのだ。
ここまで長い話になったが、要するにメンドクサイということがお判りいただければ問題ない話である。
「この人たちらは物件管理部担当者のだから……」
『@物件管理部
入金無し、いつもの人たち』
と、社内SNSで連絡を入れる。
元々、社内には物件管理部に二人いたのだが、今は辞めて、一人になってしまった。その辞めた人の分、五十戸の作業は何故か僕が引き継いでいる。
社長にも早く人を入れて下さいっと言ってはいるが、中々にいい人材がいないらしい(社長談)。経費削減のために入れてないんじゃないかと管理部の子は言っている。そうじゃないよとも宥めてあるが、本当はどうなのだろうか。
今の物件管理者の子は七十戸管理しているだけであるが、去年、入った子だからしかたない面はあるだろう。
けど、出来れば賃貸不動産経営管理士でよくいわれている通り、二百戸は一人で管理出来るので僕の分も引き受けて欲しい。
何故ならば、僕は他の業務も既に二人分以上に受け持っているのだ。
経理に関しては僕含めて二人担当がいる。が、おばちゃんの方は建築部のコスト管理と銀行やりとりだけをやっているので経営経理や、販管費支払いや、給与経理など一般的に経理と言われていることは僕一人で終わらせているのだ。
更に、総務、労務、法務、宅建士としての仕事が僕に降りかかってくるのだ。
何でこんなことになったかと言うと、人が辞める度に、何でも出来る僕に仕事を社長が降り割ったからだ。
ようは気楽な駒として使われてるのと一緒。
「冷静に考えれば確かに一人でやる量じゃないよなぁ……」
っと、一人愚痴る。
真弓さんの言う通り、転職という事も今後を考えればありかもしれない。
給与も入社してから三万円しか上がっていないのも事実だ。
「視野は広い方がいいよ、そしたら世界は開けるんでしょ?」
真矢ちゃんから返して貰った言葉が出てくる。
「確かになぁ……」
昼飯時に、外に出てスマホで転職サイトに試しに登録してみると、出てくる出てくる今の職場よりいい転職先。
なにより、自分が卒業しているカルフォルニア州立大学を登録した所、外資系からもオファーが来てしまった。
「自身を知らぬは自分ばかりか」
っと、そんな風にぼやきながら、サブウェイのランチサンドを齧り、ファミマで買ったお茶をすする。
暗い顔になってる気がする。
それは総務としてダメだと、パンパンっと両手で顔を叩き、笑みを浮かべる。
笑みを浮かべれば、気分も上がるもんである。
今日の午後は経理会議だ。
「……で、総務業務でのミスが増えている様だが?」
「仰る通りで申し訳ありません。
ただ、管理物件の費用についてはデータエクセルが完成したので安定すると思います。
そうすれば、使える時間も増えるのでチェックに回すことが出来ます」
「言い訳は良いが……まぁ、いい。
会社の数値としては、良くなってきた。
だから、営業を増やしてもっと進めていきたいと思う」
「その前に、バックオフィス増やしてください」
「お前が居れば問題ないだろう?」
「いやいや、ミスが増えていると社長の言われている通り、キャパシティオーバーの現われですよ。
自分としては物件管理部に一人、総務に一人は居れないと破綻する可能性がありますよ?」
「そんなに増やしたら、費用が増えるだろ?
お前もそれぐらい判らないでは無いだろう?」
っと、意味のない会議であった。
しかも懸念していたことをズバリと言われてしまい、ここまで社長が酷いとは思わなかった。
他に、報告した内容は経理部としての内部会計の数値と入出金、売り上げと未収入金と未出金の報告という所だ。
ちなみに総務会議も兼ねているので、辞めた子の辞めた理由の報告書も提出している。
それを観た、社長に、
「僕が入ってから退職者が百人を超えています。
人の出入りが激しく、会社にノウハウが蓄積されません」
「そこらへんは基準書を作っているから大丈夫だろう?」
「まぁ、そうですが……会社としての人材を育てられないというのは問題かと存じますが……元々定めていた、社員の為の会社であるという気風にもどしてはいかがでしょうか?」
「営業で数値を求められるのは当然だろう。
少し強く言っただけで、不甲斐ない。
それに社風についてはお前にとやかく言われる筋合いはない」
っと割り切ってしまっており、特に退職者対策を練られることも無かった。
そんな古い考え方をしているのが、今の会社なのだと、改めて僕は心の底で認識し始めた。
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