本気で向き合うこととオーバーフロー
第20話 木曜日の夜中には。
「真弓さん、真弓さん」
真矢ちゃんがもう寝ると言い、部屋に戻って行ったあと、真弓さんとリビングに二人きりになる。
もう、遅い時間だし、バスローブ姿の真弓さんもそろそろ寝る時間だ。
僕も寝間着に着がえている。
それだけど、僕は一つミッションをクリアすることにする。
「はい、なんですか?」
可愛い顔がこちらを向いてくる。嬉しそうな表情と共に。
そんな真弓さんに息を詰まらせてしまうが、決意して言う。
「今日、一緒に寝てくれませんか?」
「……はい?」
真弓さんの奇麗な黄色の眼が見開いて、僕を観てきた。
そして頬をが朱に染まり、そしてアワアワと両手を動かす可愛い動作をしながら、
「ぇっと、それってその、そういうことですか?
明日はお互いに仕事がありますし、その……。
私としては全然ありなんですけど!」
そしてズズイと胸をくっ付けてくる。
「いえ、違います」
照れ照れと言う真弓さんの誤解を解くために、端的に言う。
うん、この人、エッチなことには積極的なんだなと、改めて思ってしまうがそれはそれで魅力の一つなのだろうと頭の隅っこに置いて置くことにする。
「一緒に寝てくれるだけで良いんです」
「えっと、あ、うん、はい、どうぞ」
と説得に応じてくれる。
なぜ、こんなことをしたかと言うと、僕が真矢ちゃんと真弓さんを選ぶことに対して出来ることはちゃんとしようと決めたからだ。
「ちなみになんで……ですか?」
ソファーに座った僕におずおずと上目遣いで近づいてくる真弓さんが艶めかしくて可愛い。
「今後を考えてですよ。
するしないにせよ、寝相だったりだとか、お互いに安心できるかどうかとか、確認したいんです」
「……判りました♡」
そして二人で真弓さんの部屋の前へ。
「……あっ、ちょっと待っててくださいね?!」
慌てた様子で自分の部屋へ一人で入っていく。
そしてバタバタと音がするので、何事かと思う。
「ど、どうぞ……」
「お邪魔します……」
実は真弓さんの部屋に入るのは初めてである。
僕の部屋より一回り大きい部屋。
そして、奥の方にビジネス机があり、パソコンが置かれている。
ちゃんと奇麗にしているようで、何かをしなければいけなかったという雰囲気は感じ取れない。
「ふふ、二人で寝るのは全然余裕ですよ!」
中央に大きなキングサイズのベッドがおかれており、バーンっと真弓さんが両手で指し示す。可愛い。
「じゃあ、寝ますか」
「はい♡」
っと言ったモノの、ポジション取りに悩む。
先ずはどっちが奥か前かだ。
とはいえ、そんなことは気にせず、真弓さんが慣れた様子で奥に寝っ転がるので、僕は手前側となる。
「ふふふ♡
何だか、久しぶりに男の人と寝るから緊張してきちゃった」
「僕もそうですね、って同棲したことあるだけなんですけどね」
「あ、その話、聞かせて貰っていいですか?」
「アメリカ時代のことなんですけど、好きと言われて付き合った女の子がいたんです。
しばらく、家を同じにしていましたが、愛が重いと言われて別れてしまったんです」
苦い話である。
しかも、童貞をささげた相手とあって、行為のたびに思い出すから、その後の女性との付き合いは長く続かず、三十六歳になってしまった。
「愛が重い……それ、私も言われたことがあります」
「あ、共通点ですね」
「はい、嬉しいです♡
一番最初の旦那、真矢ちゃんの実夫に言われたんです。
俺はペットじゃない、ってそして今は沖縄で再婚したそうです」
「あ、それ僕の付き合ってた人も沖縄で結婚したっていってたので一緒ですね」
今まで聞けてこれなかった話が進んでいる。
そして言えていなかった事を伝えて、共通点を見つけていく。
何だか、楽しくなっってくる僕がいる。
「ふふ、もしかしたら……私たちの相手がカップルになっていたり」
「あるかもですねー、それはそれで面白い話です」
そんな話をしていると、少し眠気がしてきた。
真弓さんもふあああ、っとあくびをしてくるので同じようだ。
「お休みのキス、しませんか?」
っと、僕から一歩踏み込んでみる。
真矢ちゃんとはもう何度もキスをしているが、真弓さんとは一度もしていないことを思い出したからだ。
「ぇ、あ、……私がスイッチ入っちゃうかもしれませんよ?」
「それは勘弁してください。
明日は仕事です」
「はーい」
残念そうにしょぼくれる真弓さんが可愛い。
逆に言えば、そういったことを受け入れてくれる土台はあるということで、僕も男として嬉しくなってしまう。
ステイ・ゴールド。
落ち着け落ち着け。僕は真矢ちゃんか真弓さんを選ばなければならない。
そのための試練だ。
「フレンチ・キスでいいですか?」
真弓さんがその肉体をふんだんにおしつけてくる。
大きな胸に挟まれる体の感触にも負けまいと、抑えながら、応える。
「どうぞ」
「じゃぁ、頂きますね♡」
ちゅ、っと軽いキスから始まり、舌を絡めてくる真弓さん。
リンゴのような香りとともに、快楽が来た。
……上手い!
歯茎を責めてくるような舌使いにはゾクゾクさせられるし、からめとられた舌を撫でまわされるのも気持ちいいし、何より吸われる感覚に意識をもっていかれそうになる。
僕も負けじと、と思うが舌を入れ返しても逆にからめとられ、負けてしまう。
「ぷはっ、ごちそうさまでした♡」
「――うう、男としての自信が無くなりました」
テカテカとつややかな顔をする真弓さんに対して、疲れたような顔を浮かべてしまう三十六歳の僕である。明らかに経験値量が違う。
もし本番なんてことになったら、自分がどうされてしまうのか今からでも恐ろしいと感じてしまう。
「別に大丈夫ですよ、キスなんて回数を繰り返せば上手になるんですから。
これから毎日していただいても構いませんし?
そ・れ・に」
僕の下半身を指し締めながら、悪魔っ子のような可愛い笑顔を浮かべて彼女は言った。
「元気になってるじゃないですか。
バスローブの上からなのにみえてしまうということは結構、大きいんですね?」
「――っ!」
充血した棒が僕の制御から離れていた。
「今日は本番しませんが、私も火照ってるんですよ。
ふふふ。
技術だけじゃないということは覚えて頂いて下されば、きっと自信になりますよ。
気持ちも重要なんですよ、ムードってやつですね?
おやすみなさい」
そして、真弓さんは僕とは反対方向を向いて寝に入ろうとしてしまう。
僕もそれにならうように、
「おやすみなさい、真弓さん」
背をくっ付けて寝に入るように取り繕った。
興奮で寝れないかと思ったが、存外、スグに寝には入れてしまった。
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