ディスタンス・ファミリー

札幌・ススキノにある「新型コロナ後遺症外来」で働く看護師・原田恭子（４４）は、かつて旭川市の総合病院で総看護師長を務めていたが、クラスター発生の責任を問われて職場を追われた。恭子は看護師として再起しようと後遺症外来で働き始めたものの、患者の命を救えなかったことが深い心の傷となっていた。
　恭子が旭川を離れた背景には、夫・徹（４７）が、家政婦の江上慶子（４５）と不倫関係になったことがあった。建設会社を経営する徹は新規事業の失敗が続き、看護師としてメディアでも注目されるようになった恭子に強い劣等感を抱いていた。徹は閉塞感から抜け出そうと、慶子との再婚を考えていたが、慶子の息子・悠太（２０）から強い敵意を向けられた。そして心に深い闇を抱えた悠太は、徹だけでなく恭子と、長女の奈々（１５）も巻き込む…続きを読む