絢爛たる夜会の描写から始まる本作は乱歩の小説の中でも特にエンタメに特化した作品である。私は最初「怪盗『黒蜥蜴』が実は女装した男」という展開かと思った。キャッチコピーに「ボクっ子」とある通りこの華麗なる怪盗は一人称が「僕」なのである!更には平気で男装までしてしまう。緊張と弛緩を繰り返す明智小五郎VS黒蜥蜴のバトルと同時にこうしたエロティックなスリルがあり、読む者を揺さぶる。推理小説らしい丁寧な伏線回収(伏線とその回収の度に「読者諸君」へ呼びかける乱歩の丁寧さよ!)と美しいラストはまさに極上である。
お化け屋敷のような、遊園地のような。一昔前の。大衆劇場だとか。独特の、泥絵作品でもみているような心地を味わえる作品。
もっと見る