概要
青年が見つけたその森の深くに、だれかの失せ物がみずから集まるという……
「探し屋」を営む宗助は、ある森の深くに失せ物を取りにいく。
不気味で不思議なその森には、人々が失くした物が、いつのまにか集まっている。
その仕事の先に宗助は「ほんとうの失せ物」を知る。
あたたかくもすこし怖い、現代ファンタジー。
* *
あなたは大切なものを
なくしてしまったことがありますか
あなたは大切なものを
懸命に探したことがありますか
月の光を頼りに――落とした鍵を
古びた箪笥をのぞいて――昔の写真を
借りたままになっていた――文庫本を
けれど
簡単には見つからなかった
どこを探しても見つからなかった
そうやってなくなったものが
どこにゆくのかを知っていますか
忘れられた私たちの所有物が
どこにゆくのかを知っていますか
不気味で不思議なその森には、人々が失くした物が、いつのまにか集まっている。
その仕事の先に宗助は「ほんとうの失せ物」を知る。
あたたかくもすこし怖い、現代ファンタジー。
* *
あなたは大切なものを
なくしてしまったことがありますか
あなたは大切なものを
懸命に探したことがありますか
月の光を頼りに――落とした鍵を
古びた箪笥をのぞいて――昔の写真を
借りたままになっていた――文庫本を
けれど
簡単には見つからなかった
どこを探しても見つからなかった
そうやってなくなったものが
どこにゆくのかを知っていますか
忘れられた私たちの所有物が
どこにゆくのかを知っていますか
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!失くし物が集うという、真相へ誘う深い森
失くし物が集まるという不思議な森『失せ物の森』。
主人公の宗助は『探し屋』として森に立ち入り、そこで「ある人物」の失せ物の木を目撃してから物語が動き出します。
森の情景の描写が細かく、においや手触り、温度感など、肌で感じられるような薄ら寒さを覚えます。
その情景に相乗して、宗助の過去の記憶が揺らいで葛藤が少しずつ見えてきます。
揺らぎを照らして導くように、紫の蝶が飛んでいきます。
演出がとにかく素晴らしく、深い深い真相へと、読者を誘ってくれるでしょう。
失くし物を探すように。
過去の自分と向き合うことは、たやすいことではありません。
そこにはつらい記憶が眠るが、目をそむけてばかりもいられ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!本当に探し求めていたものとは
探し屋をしている主人公のもとには、様々な事情を抱えた依頼主たちがやってきます。
主人公が失せ物を探しに行くのは、家の中でも街中でもなく、ある不思議な森。
そこへ行けば、探し物を見つけることができます。
この物語は探偵ものとは少し違っていて、主人公が依頼をこなしながら、自分の気持ちと向き合う、温かくもあり、とても切ない物語です。
この小説を読んだ後、自分と向き合うのはとても難しいことだ、と改めて感じました。良いことばかりならいいですが、そこには罪悪感や後悔など、忘れてしまいたい記憶もあるからです。
主人公が本当に探し求めていたものは何なのか。ぜひ読んで確かめてみてください。