概要
そこには、この世にいない父の気配が。
「霊見える母」と「全て感じる子」、 光と影のあわいで過ごす、ゆれる夏。
ハイビスカスの咲く庭で、命と記憶が、たゆたう。
はじまりは、懐かしい物語から。
時折、思いがけない『気配』に巻き込まれながらも、家族の絆を見つめ続け、新たな家族を得る旅路――。
一反木綿はどこへゆくのでしょうか。
(8/27完了しました。 文字数調整完了。ナツガタリ'25 学園ホラー小説部門作品)
もうひとつの物語。
★血潜りと鏡の回廊 ( ナツガタリ'25短歌1首 )♯5
知らぬ庭 鐘を鳴らせば 影集う 鳥籠の中 眠る呪文書
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!現実と幻想がゆれる、夏の日の魔法
『ハイビスカスのゆれる頃』は、懐かしい田舎の家、仏間の静けさ、台所の賑わいといった、誰もがどこかで感じたことのある“帰省”の風景が、やさしく心を包みます。家族それぞれの個性がにじみ、母の存在や季節の移ろいが、現実と幻想の狭間にふわりと揺れるように描かれていて、読んでいると自分の記憶や家族への想いまでそっと呼び起こされる気がします。
幽霊や妖怪も自然と物語に溶け込み、どこかメリー・ポピンズのような魔法めいた空気も。静かな祈りや日々の営みの中に、人生の痛みと優しさが柔らかく交差します。
ぜひ、このあたたかな物語を味わってみてください。 - ★★★ Excellent!!!一反木綿に優しく見守られて
出だしの6話までは、ですます調の優しい文体で淡々と美しい情景を描いていて、落ち着いた語り口がちょっとだけ背中をゾクッとさせるが、ホラーというジャンルを感じさせない。
主人公の葉月は視える家系である。妹や弟、息子の海音も、霊が視え、感じることができる。
息子の海音がある日、一反木綿とカエルを拾ってくる。そこから平穏な日常が変化し、その後場面は急展開する。
夕立に遭った葉月とそのきょうだいと息子が廃校の小学校に導かれる。そこはかつて殺人事件が起こった場所。そして葉月は小学校時代にタイムスリップする。
お母さん、まだ生きてるお父さん、生まれたばかりの弟。友達の由美ちゃん。その時代に戻った葉…続きを読む - ★★★ Excellent!!!懐かしい想いを巡らせる、仏桑花の紅。
お盆の頃には、青い空の白い入道雲の様に
何とも言えない郷愁が湧く。
夏の真っ直ぐな日差し。蝉の声、風鈴、
何処からともなく蚊取り線香の匂い。
玄関には仏桑花の紅い花が揺れている。
懐かしい夏の思い出。
仏桑花は、亡くなった人を想う花。嘗ての
優しく心安い日々の中で、少しずつ
時は過ぎて大人になって行く。
心ときめく思い出の欠片を行きつ戻りつ、
今はもういない人たちとの 今 を
共に過ごしながら慈しんで行く、恰も
懐かしいロードムービーを見る様な物語。
優しくて切ない。そして何より愛しい。
あの世 と この世 との陌間に浮かぶ。
まるで魔法にかかって行く様に、或いは、夏の涼風に…続きを読む - ★★★ Excellent!!!叙情的な詩を読んでる感覚にハイビスカスが脳裏に浮かぶ…美的作品です
まだ2話までしか読めていませんが、主人公に感情移入すると、胸がキュって締め付けられる。
主人公目線の文体に、ですます調で丁寧に、親切につづられている文使いが、完全に、読者への丁寧さが滲み出て、作者様の心遣いがとてもお優しくて、すごく参考になります。
僕はこの作品、片田舎の避暑地で、開け放たれた大窓と、扇風機で間に合うくらいの暑さの中
棒のアイスキャンディーをひとかじりし、夏の空気に交わる扇風機の風を浴びながら、書籍になったこの作品をじっくり読んみたい。
ふと気づくと、蝉時雨から、ひぐらしの鳴き声に変わる頃
「そろそろ夕飯作らんといかんなぁ? どしよ……めんどくさいからカレーでい…続きを読む - ★★★ Excellent!!!帰省の風景に溶け込む、“気配”と家族のあたたかさ
まるで静かな祈りを聞いているような読書体験でした。
お盆の帰省という誰もが持っている風景のなかに、そっと霊的な気配が滲み込んでいて、
「この世」と「あの世」のあわいが、やさしくたゆたっているのを感じました。
過去と現在、亡き父と子ども、見えるものと見えないもの――
すべてが柔らかく交錯して、「大切なものは確かにここにある」とそっと背中を押されるような作品です。
家族という言葉では語りきれない“連なり”のようなもの。
そして、受け継がれる感受性と、それを穏やかに見つめる母のまなざしがとても印象的でした。
ハイビスカスが揺れる庭の光景が、読後もずっと胸の奥に残り続けます。