懐かしい想いを巡らせる、仏桑花の紅。

お盆の頃には、青い空の白い入道雲の様に
何とも言えない郷愁が湧く。
 夏の真っ直ぐな日差し。蝉の声、風鈴、
何処からともなく蚊取り線香の匂い。
玄関には仏桑花の紅い花が揺れている。

 懐かしい夏の思い出。

仏桑花は、亡くなった人を想う花。嘗ての
優しく心安い日々の中で、少しずつ
時は過ぎて大人になって行く。

心ときめく思い出の欠片を行きつ戻りつ、
今はもういない人たちとの 今 を
共に過ごしながら慈しんで行く、恰も
懐かしいロードムービーを見る様な物語。

 優しくて切ない。そして何より愛しい。

あの世 と この世 との陌間に浮かぶ。
まるで魔法にかかって行く様に、或いは、夏の涼風に流されて行く様に。

     揺蕩いながら想い巡らせる。

懐かしくも不思議な世界へ。
そして、今へ。




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