現実と幻想がゆれる、夏の日の魔法

 『ハイビスカスのゆれる頃』は、懐かしい田舎の家、仏間の静けさ、台所の賑わいといった、誰もがどこかで感じたことのある“帰省”の風景が、やさしく心を包みます。家族それぞれの個性がにじみ、母の存在や季節の移ろいが、現実と幻想の狭間にふわりと揺れるように描かれていて、読んでいると自分の記憶や家族への想いまでそっと呼び起こされる気がします。

 幽霊や妖怪も自然と物語に溶け込み、どこかメリー・ポピンズのような魔法めいた空気も。静かな祈りや日々の営みの中に、人生の痛みと優しさが柔らかく交差します。

 ぜひ、このあたたかな物語を味わってみてください。

その他のおすすめレビュー

悠鬼よう子さんの他のおすすめレビュー1,109