帰省の風景に溶け込む、“気配”と家族のあたたかさ
- ★★★ Excellent!!!
まるで静かな祈りを聞いているような読書体験でした。
お盆の帰省という誰もが持っている風景のなかに、そっと霊的な気配が滲み込んでいて、
「この世」と「あの世」のあわいが、やさしくたゆたっているのを感じました。
過去と現在、亡き父と子ども、見えるものと見えないもの――
すべてが柔らかく交錯して、「大切なものは確かにここにある」とそっと背中を押されるような作品です。
家族という言葉では語りきれない“連なり”のようなもの。
そして、受け継がれる感受性と、それを穏やかに見つめる母のまなざしがとても印象的でした。
ハイビスカスが揺れる庭の光景が、読後もずっと胸の奥に残り続けます。