失くし物が集うという、真相へ誘う深い森

失くし物が集まるという不思議な森『失せ物の森』。
主人公の宗助は『探し屋』として森に立ち入り、そこで「ある人物」の失せ物の木を目撃してから物語が動き出します。

森の情景の描写が細かく、においや手触り、温度感など、肌で感じられるような薄ら寒さを覚えます。
その情景に相乗して、宗助の過去の記憶が揺らいで葛藤が少しずつ見えてきます。
揺らぎを照らして導くように、紫の蝶が飛んでいきます。
演出がとにかく素晴らしく、深い深い真相へと、読者を誘ってくれるでしょう。
失くし物を探すように。

過去の自分と向き合うことは、たやすいことではありません。
そこにはつらい記憶が眠るが、目をそむけてばかりもいられません。いつかは向き合うべきなのです。
宗助が蝶を目撃したのが、きっとそのときなのでしょう。

読者も導かれるようにして、物語へと入り込めます。
真相をぜひとも見つけてください。

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