概要
今日も今日とてかすみは黒ヒョウビの実を採りに神域である黒沼へ向かう。夜の山は危険であり、人の領域ではない。事実、一年前の秋祭の晩、里を抜け出したかすみは物の怪と出会っていたのだ。
里への恨み、母への憎しみ、夫への思慕が燃え上がる──長編炎情官能伝奇譚──〈全80話、朝夜二回更新予定〉
※カクヨム掲載中の『安是の女』は、今作の前日談であり、一部に重複表現があります。
※残酷描写、暴力描写、性描写がありますが、この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※2022.2.15 までカクヨムに掲載されていた『かすみ燃ゆ』の改稿版となります。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!冒頭一行目から武者震い!!
安是の里では、恋をした女は光る。
冒頭一行目で「すげぇもの読んでる!!」と鳥肌が立ち、十行進んだ時点で私は作者さまのプロフィールを確認しました。
『きっとプロだろう』と。
山里にある村。
おどろおどろしい伝説や因習が残る地で、かすのみと呼ばれ虐げられていた娘は、ある日別の村の青年と出会う。
二つのに村は因縁があり、惹かれ合うことなどないはずだった二人が結ばれたとき、物語が動き始めます。
細部までよく作り込まれ、一部の隙もない舞台設定に気付けばどっぷりと浸かっていました。
各キャラ……特に主人公が背負った業の深さが最後まで話を貫いていて、各エピソードの動機となり、また胸を打つラストへとつな…続きを読む - ★★★ Excellent!!!その指に触れられたい。そう願い女は濡れ光る。
想い人に光を放つ山女達が住まう隠れ里の物語。
激しい女達の劣情は、繊細で、傷つきやすく、それでいて大胆で、したたか。
狂おしいほどの思慕を募らせる女の一途さと狂気を見事な筆致で描いた傑作です。
巧みな描写は読み手の視覚と触覚を否応なしに刺激し、揺さぶり、昂ぶらせる。
まるで体の芯を掻き毟るような、それでも核心に届かないようなもどかしさ。
活字から伝わる柔らかな指で神経をゆっくりと愛撫するような感覚に、読み手も身悶えすることでしょう。
燃えるように官能的でありながら、冷静で残酷。
生娘のように初心でいて、狂女のごとく穢れている。
人間が内包する相反する二つテーマを男女の営みをモチ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!陰惨かつ派手な情念の炎に焼かれる。
主人公の思考回路は、女そのもの。妬み、嗜虐心、自分のことしか考えない。大事なのは、自分の愛する男だけ──。男への情念。それが徹底している。
女は恋した相手に光濡れる。情欲の光。男は、その光る肌の合せをかき広げられれば、断ることはできない。
なんという淫靡で蠱惑的な世界。
そして、ヒーローがもう、格好良くって、甘くて、焦らして、からかう事を言って、「尊い夫」「極上の男」を体現してるんですよ。
───一度、肌が重なれば止まる術がなく、流れ落ちる勢いだった。
閨が惜しげもなく語られ、主人公の光が奔流となり、ごうと燃え盛るんですよ。
大好きな共寝シーン沢山あります。
私は堂々と言っちゃうよ!お子様…続きを読む - ★★★ Excellent!!!暗い情念と幻想的な美しさに翻弄される
他の方も書かれている通り、この物語とにかく凄い。
人間のありとあらゆる汚い部分はどす黒く、反面、恋する女が光る様はなんと美しいことか。
両極端の情景が渦巻いて、容赦なく迫ってきて圧倒されました。
ラストシーン、主人公かすみは夫の燈吾からある言葉を言い放たれ自分の欲望を自覚します。
強欲な彼女は強く、とても印象的で、大好きになりました。
彼女の野望がどうなるのか、見果てたいと思った瞬間でした。
そして燈吾については・・・
好きだけど嫌いだ、嫌いだけど好きだ!
この男に抱いた矛盾する感情の持って行きようが今のところ・・・ない。
ないのでこれ以上言えないし、今のところ言いたくもない。
読み終…続きを読む - ★★★ Excellent!!!物の怪の夫に狂わされたのは、かすみか読者か
せつない、つらい、激しい。
この作品を読んで燃え尽きたのは主人公ではなく、読者である私でした。
主人公のかすみの感情の激しさに揺すぶられ、物の怪の夫である燈悟に翻弄され、愛され、夢見て、裏切れて――。
かすみは滓の実か、幽の身か。
文明が開花する頃、未だ古き因習に囚われた隠れ里でかすみは生まれ、虐げられてきました。
安是の里の女は恋をする光に濡れる。
光に濡れるというこの言葉の淫靡さは、読んでみないとわかりません。安是の里の誰にも光らなかったかすみが、物の怪の夫の前だけでは光り濡れる。このえもさ。唯一無二の比翼の連理を体現してくれるこの出会い。それが、最後の最後でまさかの。
燈悟のこと…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あらゆる感情が濃すぎて息ができない
安是の里では、女は恋をすると光る。
比喩でもなく、本当に体が光る。愛しいひとを思って頬を染めるように、誰にも譲らぬと熱く猛って。
主人公のかすみは、そんな里でたったひとり光らない女。
彼女の母の悪行によってかすみは里の中でも「かすのみ」と蔑まれ、里人たちから侮蔑の目で見られ、あるいは無視されて生きてきた。
そんなかすみを光らせたのは、黒狐の仮面を被った物の怪――燈吾。彼はかすみにとって唯一、自分を認め、愛してくれたひと。
かすみと燈吾の、許されざる愛の物語……かと思いきや、これはそんな軽々しい言葉で一括りにしてはいけない物語です。
恋情、憎悪、嫉妬、欲望、絶望……あらゆる感情が濃く美しく…続きを読む - ★★★ Excellent!!!美しく艶めかしく『やらしい文章』に翻弄される心地よさ
古い因習に囚われた隠れ里に繰り広げられる、おぞましくも美しい物語。
ときに鬱々とした怨嗟がうずまき、ときに血にまみれ臓腑がまき散らされ、それでもなおこの物語を『美しい物語』たらしめているのは何なのか……。
全編にわたって冴える『やらしい文章』ではないかと私は思う。
(やらしいなど表現すると作者に失礼ではないかと不安になるが、ご本人もプロフィールで「なるたけ、やらしい文章を目指していきます」とおっしゃっているので、問題がないということにしておこう)
小説とは文章による表現だとするならば、やはり筆力は高いに越したことはなく、さらに言えば美しく艶めかく『やらしい文章』であれば最高だ。
作者…続きを読む