美しく艶めかしく『やらしい文章』に翻弄される心地よさ

古い因習に囚われた隠れ里に繰り広げられる、おぞましくも美しい物語。
ときに鬱々とした怨嗟がうずまき、ときに血にまみれ臓腑がまき散らされ、それでもなおこの物語を『美しい物語』たらしめているのは何なのか……。

全編にわたって冴える『やらしい文章』ではないかと私は思う。

(やらしいなど表現すると作者に失礼ではないかと不安になるが、ご本人もプロフィールで「なるたけ、やらしい文章を目指していきます」とおっしゃっているので、問題がないということにしておこう)

小説とは文章による表現だとするならば、やはり筆力は高いに越したことはなく、さらに言えば美しく艶めかく『やらしい文章』であれば最高だ。

作者の『やらしい文章』でなければ、これほどの感動をもって迫ってこなかったのではないかと思う。質の良い文章は、酩酊にも似た心地よさをもたらしてくれるものだ。

レビューをお書きの方々の中に、書き手の方も多いように見受けられる。
もしかすると本作に触れ、嫉妬を覚えた方も少なくないのではないだろうか。

少なくとも私は、この壮大な物語を『やらしい文章』で書ききった作者の筆力に嫉妬する。嫉妬の炎は胸を焦がし、やがて寒田の男のように蛍火を放つようになるかもしれない。

冗談はさておき……
あなたの胸の内に少しでも興味が湧いたのなら、迷うことなく『かすみ燃ゆ』の世界に飛び込んでみてほしい。『やらしい文章』に翻弄される心地よさを是非、あなたにも体験していただきたい。

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