銀河の最果ての最終処分所を預かる「博士」のもとに、一人の青年が流れてきた。彼は助けてもらったお礼を兼ね、星々で集めてきた「星語り」を披露するのですが、そこにはなにやら思惑もあるようで――。
いくつかの短編形式のお話が連なるSFのお話です。いわゆるアラビアン・ナイト方式ですね。かのシェラザード姫は暴虐の王を鎮める事を企み千もの話を紡ぎましたが、今作の「私」も千光年の銀河を旅して集めた星にまつわるお話、「星語り」を博士に披露していきます。
不思議な星々で繰り広げられるどの星語りも、ちょっとほろ苦くて、少し感傷的なんです。SFはSFでもセンチメンタルでファニーなストーリーが次々と語られていくんです。
作者お前登場人物たちをなんて目に合わせるんだ!と思いつつも読み進めて行くうちに、あまたの星たちの1つにすぎなかった星語りたちが、次第に連なってくるのです。そして――。
銀河のようにたくさんのお話の中からこのお話を、この作者を目にしたそこのあなた。是非、お立ち寄りください。そして、アラビアの夜の一族(アラビアン・ナイト)にも負けず劣らない、銀河の騎士(ギャラクシアン・ナイト)のものがたりを是非。
だってね、面白いんですよ。
読み始めた時は短編連作なんだ、と思って冷静に読んでたんです。
でも途中から、あっと驚く展開になり、それからは毎日の更新が楽しみな作品の一つとなりました。
短編は別々の関係のない話しと思いきや、とんでもない。
全ての伏線を回収してラストまで持っていきます。
その手腕たるやお見事です。
他の方も書いておられますが、圧巻、それしか言いようがないです。
短編自体も不思議で奇妙なおとぎ話のようで、正に「センチメンタル・ファニー・ストーリーズ」です。
私はこちらの作者様の別作品の大ファンですが、本作品も素晴らしかった。
不思議な話の虜になること、間違いなしです。
これは、七つの星語り。一つ一つバラバラのようでいて、実は繋がる。
そう、本当は遠い星々の姿が、地球から見れば近く、そして星座として結ばれるかのように。
感傷的で、奇妙で、そして切ない。
圧巻、ということばで簡単に言ってしまって良いのかは分からない。分からないがしかし、相応しいのはこの言葉であるように思うのだ。
この感傷的で奇妙な物語群は、最後どのような姿を見せるのか。あなたにはどのような姿に見えるのか。
人とは愚かな生き物である。そんなことばがある。
けれども人は人であるがゆえ、立ち止まっても振り返っても、少しづつでも前へと進んでいくのでしょう。
ぜひご一読ください。
いや、ちょっと、表題からしてセンス良すぎません?
この物語はSFですよ。サイエンス・フィクション [ Science Fiction ] つまり、空想科学小説。そこへ来てセンチメンタル・ファニー [ Sentimental Funny ] を宛て、しかも物語全体をつらぬく情緒を端的に表すだなんて……好き!(語彙力)
吟遊詩人が歌う、恋愛詩が如き"星語り"。主人公の星語りによって、物語は進んでいきます。
一見すると無関係とも思われる星語りが、奇妙に絡み合ってもう一つの物語を浮かび上がらせる構成が見事。全体をつらぬく主題に、「人の想いというものは、ひた向きであればあるほど第三者には滑稽に映るものなのだな」などと、改めて考えさせられた次第。
特に『五語り、銀河の播種』に至っては、自分の若かりし日の愚行を思い返し、胸に痛みを感じながら読み進めました。伏して詫びたい気分だよ、まったく!(何ごと!?)
さてさて、わたしの過去への猛省はともかく、誰の心の中にも存在する、ある種の『切なさ』を呼び起こしてくれる物語群。あなたの目にはどう映るでしょうか。
喜劇のように映りますか? それとも悲劇でしょうか?
そして星語りによって浮かび上がる事実とは……。感傷的で奇妙な小話群、せひご自身で味わってください。
タイトルの通り、感傷的で奇妙な7編の物語が散りばめられた作品です。
流星群屋内待機指示〈星休み〉の避難を受け入れてもらったお礼として、惑星缶詰循環工場の責任者〝博士〟に「星語り」を披露することになった〝私〟。
星を巡り、星と人の声を聴いて語るという生業の〝私〟の「星語り」は一体どのようなSF(センチメンタル・ファニー)を聴かせてくれるのでしょうか。
一語りを読み終えた直後から、誰もが〝博士〟の言葉に大きく頷き、彼と一緒に一喜一憂して物語を楽しむことになるでしょう。厳つそうな顔をして恋バナ大好きな〝博士〟。可愛い〜。
まったく異世界的な物語もあれば、身近にありふれていそうな現代カップルのお話もあったりします。でもそこはSF(センチメンタル・ファニー)ですから。一筋縄ではいきませんのでお楽しみに。
〝博士〟と一緒にキャッキャッウフフ(だけじゃないですが)と楽しんでいたはずなのに、徐々に交わり一本に繋がっていくストーリーがとても気持ちいい。上質な連作短編集でもあり、長編としてもしっかり成り立っており一度で10度くらい美味しい作品です。
こんなに素敵でそれでいてお得感満載の小説、なかなか出会えないですよ。ぜひ味わってみてくださいね。
SFと書いて『センチメンタル・ファニー』と読む、その造語がこれ以上なく腑に落ちる物語だと感じました。
銀河の最果てたる惑星缶詰循環工場にめぐり着いた男が、そこの責任者である博士に〈星語り〉を聞かせるという体裁で綴られていく、連作短編集です。
物語を通して、宮沢賢治の作品のオマージュがそこかしこに散りばめられています。
しかし〈星語り〉にはどれもオリジナリティがあり、その登場人物だからこその唯一無二の感傷が描き出されていきます。
些細なことで行き違ってしまう人と人との心。
ちょっとした運命のいたずらで二度と戻らなくなってしまった関係性。
きっと誰しも、幸せを、愛を求めていただけなのに、誰のせいでもなく一生消えない傷を負ってしまう。
幻想的なのに生々しい。
まるで心の一番痛いところを攫っていくような筆致が、深い共感を誘います。
脈絡なく綴られていた〈星語り〉が、終盤、繋がって収束していく展開がお見事。
過去の消せない哀しみを内包したまま、新しい運命が巡っていく。苦しくも愛おしく、温かな読後感に涙が出ました。
静謐と綴られる、心を震わす情動に満ちた物語です。素晴らしかったです!
地球を離れた銀河の片隅に、その毬栗のような星はあった。缶詰を処理するための施設を擁するその星では、<星休み>の時間になると、地下などの安全な場所に避難する必要があった。主人公の青年は、ある目的のためにこの星にやって来た。そして虹色に輝く少女を見た。しかしその後すぐに星休みに入り、一緒に地下に避難した男性と共に時間をやり過ごすことになる。主人公の青年は、星の語り部だった。
人間の女性に寄生する代わりに、その星を寿ぐ寄生虫の話し。
星の間を渡り、敵に対して恐怖を与える存在を映す鷺に似た鳥は、外敵の少ない人間に何を見せるのか。
そして缶詰のラベルを、缶の内側に張り付ければ世界を内包できると語る女性の話し。
それから——。
人間が地球を離れ、あちこちの星に棲みついた今、通信手段は手紙を込めた缶詰だ。その缶詰を見つけた人間は、缶詰のラベルに貼られた住所やその人物に、缶詰を渡さなければならない。しかしだからこそ、そこに不穏はあった。手紙に悪意は? ラベルを張り替えることもできるのでは?
終始、世界観は宮沢賢治の作品群に似た物となっており、その幻想的な世界観にどっぷりと浸かることが出来る構成となっています。表現にも拘られており、女性のことを月に例えた文章を拝読した時には、鳥肌が立ったほどでした。『銀河鉄道の夜』が好きな方は必読の一作です。
是非、御一読下さい。