とある銀河の片隅で、星語りを始めよう。

 地球を離れた銀河の片隅に、その毬栗のような星はあった。缶詰を処理するための施設を擁するその星では、<星休み>の時間になると、地下などの安全な場所に避難する必要があった。主人公の青年は、ある目的のためにこの星にやって来た。そして虹色に輝く少女を見た。しかしその後すぐに星休みに入り、一緒に地下に避難した男性と共に時間をやり過ごすことになる。主人公の青年は、星の語り部だった。
 人間の女性に寄生する代わりに、その星を寿ぐ寄生虫の話し。
 星の間を渡り、敵に対して恐怖を与える存在を映す鷺に似た鳥は、外敵の少ない人間に何を見せるのか。
 そして缶詰のラベルを、缶の内側に張り付ければ世界を内包できると語る女性の話し。
 それから——。

 人間が地球を離れ、あちこちの星に棲みついた今、通信手段は手紙を込めた缶詰だ。その缶詰を見つけた人間は、缶詰のラベルに貼られた住所やその人物に、缶詰を渡さなければならない。しかしだからこそ、そこに不穏はあった。手紙に悪意は? ラベルを張り替えることもできるのでは?

 終始、世界観は宮沢賢治の作品群に似た物となっており、その幻想的な世界観にどっぷりと浸かることが出来る構成となっています。表現にも拘られており、女性のことを月に例えた文章を拝読した時には、鳥肌が立ったほどでした。『銀河鉄道の夜』が好きな方は必読の一作です。

 是非、御一読下さい。

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