冴えない日常をだらだら消費していた男子高生たちが、ひょんなことからヲタ芸をすることに——?
初めは三人だったヲタ芸チームも、いつの間にやらクラスの大半を巻き込む一大ムーブメントになっていく。
はたして彼らは理事長の廃校計画を阻止できるのか?!
まず、男子高生の生態がリアルです。
取り立てて特技もない男子たちの、どことなく満たされない、だけど何かに本気になることもないような、ユルくてわちゃわちゃした空気感がいい。
これだけでも教室の壁となって眺めていたいという同志も多いことと思います。
迷える男子たちは、如何にしてヲタ芸への熱意をたぎらせていくのでしょう。
たとえ「廃校計画の阻止」という一応の目的があるのだとしても。
彼女がほしいのか。複雑な家庭環境からの逃避か。クラスのノリに合わせたのか。男としての意地か。
一人一人、大なり小なり、みんな何かを抱えています。あるいは何もないと思い込んでいます。
そんな彼らが一様に、光り輝くサイリウムを両手に携え、一つのパフォーマンスを作り上げる。
クライマックスでどんな景色が見えるのか、否が応でも期待が高まります!
馬鹿馬鹿しくても。惨めでも。時々苦しくて、悔しい思いをしたとしても。ついでに彼女いなくても。
暑苦しい男子高生たちの唯一無二の青春が、確かにここにある!
もっとたくさんの方に読んでいただきたい作品です。
俺の青春時代って、どんな感じだったっけ。理系の学校だったから、男子だらけだった。恋愛至上主義にかぶれて、彼女欲しくて近隣の高校に遠征してた気がする。
そんなアオハルを過ごした俺的に、本作は「そのエピソードは止めて差し上げろ。俺の古傷をえぐる」ってな感じで読んでいていちいち心が痛い。
いや、俺のアオハルはどうでもいい。ヲタ芸だ。
動画共有サイトのおかげなのか、ヲタ芸のイメージも様変わりしたように思う。
何だかやけにオシャンなイメージだし、踊り手もシュッとしてる。
だがどうだ、本作のボーイズは冴えない男子高生だし、ネットの拡散力に頼ることを禁じられているではないか。しかもヲタ芸で学校を救う……だと!?
さすがはキタハラ先生、企みがあざとい!(褒め言葉)
二部終了時点で、ヲタ芸打ってるのは三人しかいないのだけれど、概要欄には二十人の登場人物の名前が並んでいる。やるのか……そうか、やるんだな。二十人のヲタ芸。
さぁ、どうやってこの人数を巻き込んでいくのか、三部以降も楽しみしかない。
俺の青春はあまり冴えたものではなかったし、少しでも輝いてやろうと足掻いた記憶もない。そんな俺に、熱い青春を追体験させてくれるのではないかと、本作への期待は高まるばかりだ。
さぁ、みんな! 一緒に青春しようぜ!
今回すごく思ったのはビジュアライズ? 読んでいて映像がすごく浮かんでくること。小説なのに映画を観てるみたい。各キャラの動き? それぞれテンポが違って実際に動いてるのが見える。そこで織りなすドラマと情景がとにかく見事!
オタ芸をしよう、と3人でやろう!! ってなった時にワクワクしました。
こんなに血の通ったキャラ、体温を感じるのはキタハラ作品としては初めてかもしれません。これまでの過去作はみんなどこか冷めてる・諦めてる所から希望を見出そうとしてきたけど、この作品も同じ流れのはずなのに躍動感が凄い。
とにかく僕からしたら『熊本くんの本棚』はインディー作品的であり、あの時しか書けない狂気がすごく好きだけども、この作品のメジャー感がヤバい! 今までの中で、1番好きです!