今日は地球に彗星が墜ちる予定の日だけど、学校は休校にならなかった。
地球に墜ちる予定の彗星は大気圏外で爆破されて、何事もなかったかのように世界は続いていくからだ――そう思っていたのに、くだらないヒューマンエラーで彗星は爆破に失敗した。唐突に迎えることになった世界の終わりを前にして、烏間ホタルは幼馴染の九條イサナに誘われて今まさに自分たちの元に墜ちようとする彗星を見に行くことにしたという話である。
本編のタグにもついているようにこの作品は百合小説である。
天才肌だがそれをひけらかすことなく大型犬のようにホタルに懐くイサナと、そんな彼女の世話を焼くホタル。心地が良いけれどいつか終わるであろう二人の関係は、彗星によって強制的に終わりを迎えることとなる。
そんな終末を精緻な筆致を見事に描いている。
二人の終わりは決して不幸ではなかったはずだ。
二人で最後の時を迎えたいけれど、自分に彼女との最後の時間を共有する権利があるかと悩むホタルをなんでもないような顔で迎えに行くイサナ。
終わりを前にして心の底にあった怯えを顕にしたイサナを抱きしめて、いつも通りの彼女に戻してやろうとするホタル。
来世での約束とそこからいよいよ世界が滅びるという描写は壮絶でありながら美しい。
終末を前にした二人の関係性を書ききった美しい百合小説であったと思う。
(KAC第1回アンバサダー企画お題「書き出しが『〇〇には三分以内にやらなければならないことがあった」/文=春海水亭)